親離れクマ、神出鬼没 民家や会社、市街地で続々
●警戒レベル最大に引き上げ 6月のクマは神出鬼没―。今月に入って石川県内でクマの目撃情報が急増し、各市町が警戒態勢を強化している。例年、5~6月は親離れしたクマが新たな生活場所を求めて活発に移動する時期で、専門家は「普段見られない場所にも現れるようになる」と指摘。小松市では10~12日、民家の玄関先や会社の事務所近くなど市街地でも相次いで出没が確認され、市は警戒態勢レベルを最大に引き上げて巡回や注意喚起に当たる。 ●小松、6月16件 前月までの3倍超 石川県によると、6月のクマの目撃件数は、12日時点で計38件と5月の40件を大きく上回るペースで推移している。中でも小松市は16件で最も多く、1~5月の5件と比べて3倍超となっている。 同市内では8~12日、5日連続で通報が寄せられた。クマの生態に詳しい県立大の大井徹特任教授は、小松はクマの生息域と人間の生活圏が接する山林周縁が長いとし、「他の市町に比べて目撃が多くなっている可能性がある」と話す。 小松市はクマが目撃された状況に応じて関係職員の配置数を変更しており、10~13日は警戒レベルを最大の5とした。捕獲・排除を前提とした人員態勢で、クマが見つかった地域だけでなく、近隣の校区にも注意を呼び掛ける。 同市教委は、レベル5と判断された月津、矢田野、粟津、苗代の各小学校に対し、集団登下校などの措置を取るよう要請。苗代小は12、13日と児童の登校時に保護者に付き添ってもらったり、車で送ってもらったりしており、14日も継続する。 今季はクマの餌となるブナの実が凶作と予想され、県内では5月までに2件の人身被害が発生した。5月の捕獲数は昨年度の同じ時期と比べて2倍の14頭となっており、県は5月24日、これまでで最も早くツキノワグマ出没注意情報を発令した。 ●交尾期のオス、桜の木の実に要注意/県立大・大井特任教授 大井特任教授によると、5、6月は親離れした満1、2歳の子グマに加え、交尾期に入ることから、メスを求めて動き回るオスにも注意が必要となる。 さらに、6月から7月にかけては、その年に生まれた子グマの移動範囲も広がり、親子グマの姿も多く見られるようになる。この場合、母グマは子を守ろうと攻撃的になりやすく、危険だという。 また、今後は桜の木になった実が熟す時期になるとし、大井特任教授は「山林に近い街路樹や公園に桜が植わっている場合、クマが出やすくなるので気をつけてほしい」と呼び掛けた。 ●能美、白山で各1頭 13日午前10時40分ごろ、能美市坪野町の市美化センター前の県道で体長約1・5メートルのクマ1頭がいるのを住民が見つけ、市に連絡した。白山市では同日午後3時50分ごろ、瀬波の林道でパトロール中の白山署員が子グマ1頭を目撃した。