【内匠宏幸】佐藤輝明のDH起用は?「特にビジターの場合…」交流戦を熟知した岡田彰布の胸の内
5月19日のヤクルト戦を勝ち、このカードを2勝1敗で勝ち越した。これで3カード連続の勝ち越し。着実に貯金を殖やしている阪神だ。今年は大きな連勝はないが、大型連敗もない。「そら大きな連勝があればいいけど、そうはうまくいかん。だから逆に大きな連敗をしないことが大事。まずは1つ、1つの積み重ねよ」。監督の岡田彰布は現状を見つめ、地道な選択にシフトしている。 【写真】助っ人外国人のズボンを必要以上に上げて、困惑させる佐藤輝明 苦しい時こそ、「ベンチの力」で勝ちをもぎ取る。そのベンチ力のひとつが「駒使い」である。佐藤輝を2軍にやり、4番大山も先発から外した。近本を3番にして、井上を1番で起用したりと、激しい動きを見せた。 ゲーム中も同様。19日の試合でチャンスに代打糸原を告げ、相手が左腕に代えた途端、代打の代打で原口を出した。現在、糸原と原口は代打の2枚看板。それなのにあえて代打の代打という策に打って出た。代えられた糸原はその対応を理解し、準備していた原口も狙い通りにタイムリーを放った。失敗していたら…といったマイナス感覚でなく、好結果につながることによって、2人の代打としての価値が、また上がった。 勝負どころの駒使いにも、それが表れている。ここは勝負と決めたら、迷いなく駒を使う。代走で植田を送り、さらに走者が出れば熊谷をと1イニングで2人、代走に起用する。盗塁できなくても、相手バッテリー、相手ベンチに圧力をかける用兵。阪神ベンチも敏感になる。「ここが勝負!」とベンチが高揚する。こういった起用法がここ最近、本当に目立っている。 こんなベンチワークがさらに求められるのが目の前に迫った交流戦となる。広島、巨人との計6試合が終わったあと、5月28日から交流戦がスタートする。ホームで9試合、ビジターで9試合。143分の18であるが、これがペナントを左右するものとして、重要な戦いになる。 「場合によってはひとり勝ちだってあるし、逆にひとり負けもある。それだけ重い試合になるし、18試合でも順位に直接、反映するわけやから」。岡田は交流戦が始まった2005年から、常にペナントもポイントに挙げてきた。そして交流戦にはかなりの自信を持っている。2005年から2008年まで、トータルで交流戦は勝ち越しているし、2010年のオリックス監督時は交流戦優勝に導いている。 昨年は負け越したが、さほど大きな傷を受けることなく乗り切った。「特にビジターの場合のDH制やな。ここをうまく起用して攻撃力を厚くするか。それと地の利を生かせるかどうか。ホームで投手が打順に入ることで慣れないパとの違いをどう表現するか」。交流戦の戦い方を熟知しているから、今年もその駒使いに注目が集まる。 そんな岡田のことだから、すでに対策は練っているはず。その頭にチラチラと浮かんでいるのが佐藤輝ではないか。今回の2軍行きは無期限とされているが、再登録されるタイミングとして交流戦がベストといえる。特にDH制のビジターで、佐藤輝を指名打者に起用。守りの不安がないポジションで起用すれば…といった期待感がある。そこまでに佐藤輝が状態を上げていることが前提ではあるが、岡田なら、そんな起用法を練っていても不思議ではない。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)