日銀・景気判断、北陸と東海を引き上げ 7年度も賃上げの必要を認識
日銀は7日公表した10月の地域経済報告（さくらリポート）で全国9地域のうち北陸と東海の景気判断を7月の前回報告から引き上げ、北海道や東北など残り7地域は据え置いた。穏やかな景気回復と構造的な人手不足を背景に、同日の支店長会議では令和7年度の賃金について、6年度に続いて賃上げする必要があるとの認識が企業間で広がっていることが確認された。 ■賃上げ、最優先の課題か 北陸の景気判断を引き上げたのは能登半島地震からの復興が進んでいることが主な理由。ただ、9月の能登豪雨の影響については注視する必要があるとした。東海では自動車大手の認証不正問題が一段落し生産が回復したことが影響した。 各地の景気判断は「緩やかに回復している」や「緩やかに持ち直している」などと総括した。ただ、物価高の影響で個人消費など一部に弱めの動きも残る。1日発足した石破茂政権にとっても、賃上げの定着が最優先の課題となりそうだ。 「人材確保が進み、定着率も改善した。今後も積極的な賃上げによる人手の確保・係留を進める方針」 さくらリポートでは、函館支店管内の宿泊業者のこうした声を紹介した。北九州支店管内の小売業者は6年度に基本給を一律に引き上げるベースアップや賞与を含む大幅な賃上げを行ったが、7年度も「同様の賃上げを実施せざるを得ないと考えている」と明かす。 とはいえ、静岡支店管内の小売業者は7年度以降の継続的な賃上げは困難だとして「今後はセルフレジの導入など省人化投資により人手不足に対応していく」と苦しい状況を報告。日銀の担当者は「賃上げで人手を確保したいという動きがある。ただ、中小企業はバラつきが大きく、収益面で厳しいという企業もある」として今後も注視する必要があるとの見方を示した。 ■訪日客増加で個人消費に伸び 一方、項目別では、「生産」は北海道と北陸、東海の3地域で判断を引き上げた。自動車の販売増や、生成人工知能（AI）向けなどの半導体の需要が回復したことも寄与した。 「個人消費」は関東甲信越と東海で判断を引き上げた。節約志向の影響が残るがインバウンド（訪日客）の増加で百貨店の売り上げなどが伸びた。「所得」は北陸と中国で人手確保による賃上げの動きを踏まえ判断を引き上げた。「雇用」は北陸で判断を引き上げた。「公共投資」「設備投資」「住宅投資」の3項目は全地域で判断を据え置いた。（宇野貴文）
