OA不在でパリ五輪に臨む大岩ジャパンに、セルジオ越後「それでもいいメンバーがそろった。あくまでメダルを目指してほしいね」
男子の五輪代表がオーバーエイジ(OA)枠をひとつも使わなかったのは残念。海外組の招集が難しければ、国内組を呼ぶ手もあったと思うんだけどね。森保監督だったら古巣の広島から誰か呼んでいたかもしれない。 ただ、今回のパリ五輪では、他国も強力なOAやA代表の主力になっているような選手をあまり呼べていない。地元フランスもエムバペの招集を見送っている。だから、そういう時代の流れだから仕方ないと割り切って考えるしかない。 大岩監督もアジア最終予選(U-23アジア杯)を戦い抜いたメンバーでいくと腹を決めたのだろう。実際、戦術や連携面を考えればプラスに捉えることもできる。選ばれた18人も「俺たちだけでもできることを見せてやる」と気合いが入っているはずだ。 その顔ぶれを見ると、国内組はJリーグでちゃんと結果を出している選手が多く、海外組もこのチームに欠かせない選手ばかりで、いいメンバーがそろったと思う。 彼らにはやっぱりメダルを期待したいね。色は何でもいい。僕が日本に来てからもう52年が経つんだけど、その間、Jリーグができるなど日本のサッカーのレベルはすごく上がった。 でも近年、五輪では毎回メダル獲得を目標に掲げながら実現できていない。僕ももう来年には80歳になるし、そろそろ見せてほしいよ。(銅メダルを獲得した1968年メキシコ五輪当時の主力だった)釜本(邦茂)さんも吉報を待っているだろう。 まあ、それはともかく、まず大事になるのは初戦のパラグアイ戦。五輪は中2日で試合が続く短期決戦。スタートでつまずくとチームを立て直す時間がほとんどない。だから、ここで最低でも勝ち点1(引き分け)、できれば勝ち点3(勝利)が欲しい。 そして、次のマリ戦は正念場。3月に親善試合で対戦して1-3で完敗した相手。大きくて速い選手が多く、日本は右サイドから何度も崩され、こてんぱんにやられたよね。 でも、日本のメンバーはあの時からかなり入れ替わっているし、あの試合をもとにマリ対策を練っているはず。お互いの初戦の結果も試合運びに影響してくるので何とも言えない部分はあるけど、勝機はあると思う。 逆に3戦目のイスラエルに関しては、それほど心配していない。日本は南米やアフリカなどの個で仕掛けてくるチームが苦手だけど、組織的にショートパスをつないでくる、いわゆるヨーロッパスタイルの相手には十分対応できるだろう。 メンバー18人全員に期待しているけど、あえて名前を挙げるなら守備陣ではGK小久保。彼はアジア最終予選からずっと安定しているよね。先頃行なわれたEURO(欧州選手権)では各国のGKの活躍が目立っていたように、小久保にもスーパーセーブを期待したい。 攻撃陣では細谷と藤尾、ワントップ候補のふたりだ。FWが少ないチャンスに決めきれるか。結局、そこが勝ち上がりのカギを握ると思う。 正直、今回は事前の注目度や期待度でバレーやバスケットに負けているなと感じる。ただ、それも裏を返せば、プレッシャーが少なくて済むということ。五輪でもサッカーしか見ない僕は負けたら怒るけど(笑)、良くも悪くもほとんどの日本人はすぐに切り替えてメダルの獲れそうな別の競技に関心を向けるだけ。だから、選手も大岩監督も思い切ってやってほしいね。 構成/渡辺達也