「苦手なこと」は克服するのではなく“回避する” 「恐怖」は人が生きていくために必要不可欠
また、周囲に「電話が苦手です」ということを公言しておくのもいいでしょう。私も「長いエスカレーターには乗れません」と公言してあるので、みんながエスカレーターに乗るときに「私はエレベーターで行きます」と一人だけ別行動をしても、とくに問題は起きません。 無理して相手に合わせると、ますます恐怖心をこじらせてしまいます。 初めて会う人や新しい職場に行った際には、最初に「電話はちょっと苦手なので、これこれでお願いします」と先手を打って公言しておくとよいと思います。そうすれば、「この人は電話が苦手」という目で見てもらえるので、少々の失敗は大目に見てもらえるはずです。
それに「自分はこれがいやです」とはっきり伝えるだけで、気持ちが楽になることもあるのではないでしょうか。 ■恐怖は人に必要なもの そもそも「恐怖」は人が生きていくために必要不可欠な感覚です。恐怖心がなければ、身の安全を守ることができません。ただ何に危機感や不安を持つか、アンテナの立て方は人それぞれだと思うのです。 高いところがこわい人もいれば、狭い空間がダメな人もいます。私の友人の子どもは赤ちゃんのころ、丸いものを見ると泣き出し、ドラえもんやアンパンマンなど丸っこいものはみなダメで、とくに雪だるまを一番こわがったと言っていました。当然ながら、それらが出てくるアニメや絵本も読めなかったそうです。
しかし幼稚園に入ったころから何がきっかけかはわかりませんが、まったく問題なくなったとのことでした。 このように人それぞれ恐怖の対象に違いがあり、年齢や環境によって変わってくる場合もあります。もしそうなら、恐怖だけを特別なものととらえずに、甘いものが好きとか嫌いとか、赤い色が好きとか嫌いなどと同じように、個人の傾向、個性として見るべきではないでしょうか。 それを無理に「直せ」と押しつけるから、よけいに追い詰められて、病的にエスカレートしてしまうのだと思います。