保守的なドイツの銀行、納得の暗号資産戦略
グローバル金融イノベーションについて考えるとき、ドイツが最初に思い浮かぶことはあまりないだろう。 低迷する製造業や厄介な政治状況に加えて、ヨーロッパ最大の経済大国ドイツは、市場よりもむしろ銀行が支配する保守的で硬直した金融セクターで知られている。 そのため、ドイツの銀行がまったく新しいタイプの市場の開拓でヨーロッパをリードしていることには、少し驚かされる。
保守的な銀行の積極的な取り組み
ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)は先週、今年後半に暗号資産(仮想通貨)の調達とカストディサービスを開始すると発表した。 LBBWはドイツ最大の州立銀行だ。州立銀行は通常、少なくとも一部が州によって所有されている貯蓄金融機関の一種。その名が示すように、貯蓄金融機関はすでに保守的な分野でも最も保守的な金融機関であり、その焦点は利益よりも安定性にある。 現在のLBBWは1999年に合併して誕生したが、その由来は1818年まで遡る。バーデン・ヴュルテンベルク連邦州、バーデン・ヴュルテンベルク貯蓄銀行協会、シュトゥットガルト市の所有であるにもかかわらず、LBBWは概ね、同業他社よりも積極的だ。 LBBWはドイツの債券市場において最大級の参加者であり、ドイツ最大級の不動産貸付業者でありながら、高い債務格付けを誇っている。 そして今、より前向きなはずの国や地域の、より積極的な銀行の幹部が「ゴミ」などと呼ぶ資産へのアクセスを法人顧客に提供しようとしている。 さらに驚くべきは、発表で使われた表現だ。LBBWのコーポレートバンクCOOであるユルゲン・ハレンゲル(Jürgen Harengel)氏の声明には次のようにある。 「法人顧客からのデジタル資産に対する需要は高まっている。我々は、暗号資産がさらなるビジネスモデルのための基盤として確立されると確信している」 「法人顧客からどのような需要があるのか?」「どのようなビジネスモデルがあるのか?」という疑問が浮かぶかもしれない。それについては後ほど説明するが、まずは一歩引いて考えてみよう。 米国の機関投資家の雰囲気は対照的で、個人投資家需要(そして、個人投資家または富裕層に依存している機関投資家の関心)がすべてだ。言い換えれば、米国の焦点は価値の保存を目的としたヘッジと投機的な取引にあるだろう。 ドイツでは、目的はよりビジネスにあるようだ。 米国とは異なり、ドイツの金融業界は市場よりもむしろ銀行が支配的で、超保守的な国有貯蓄銀行が非常に大きな役割を果たしている。 企業の資金調達は債券や株式よりも負債が圧倒的に多く、つまり、ドイツの銀行は米国の銀行よりも企業活動に深く入り込んでいる。