タイのアートシーンについて、ふたりのキーパーソンが解説!「現代アートのギャラリーが急激に増加」
シラパコーン大学アートセンター 国内トップの美大が有する、宮殿を転用したギャラリー タイで初めて芸術学部を設立したシラパコーン大学は、3つのギャラリーを所有する。そのひとつである同アートセンターでは、大学とは分離した独自のプログラムを実施。社会問題、コミュニティ、政治など、骨太なテーマを据えたタイの現代アーティストを紹介している。さらに年に1回、35歳以上の実力派を対象にした公募展を開催し、アーティストの自立をバックアップしている。展示室として使われている空間は、なんと初代国王ラーマ1世とラーマ5世の元宮殿。アートを鑑賞しながら、王族の暮らしぶりや時代ごとの建築様式を楽しむという別アングルの楽しみ方もある。 バンコク現代美術館 大富豪が財を投じた、バンコク最大級の私設美術館 バンコク現代美術館は、携帯電話会社ディータックの創業者であり、アートコレクターとしても知られるブンチャイ・ベンジャロンクンのコレクションを集めた美術館だ。私設といって侮るなかれ、総床面積2万㎡の展示室に常設だけでも4000点。世界的に知られるタワン・ダチャニーやチャルード・ニムサマーの重厚な作品群をはじめ、宗教美術を軸とするタイアートの多様な表現が見られる。5層のフロアをじっくり見るなら、2~3時間の余裕はもっておきたいところ。展示室や階段横に置かれているベンチのデザインも個性的なので、小休止しながらじっくり味わって鑑賞してほしい。 ヴァシランド・ブックショップ 週末に活況を呈する、アートブックショップのパイオニア 印刷や製本にコストがかかるタイで、いいアートブックを見つけるのは至難の業。そんな状況を受けて、オーナーのピンがインスタグラムでオンライン書店を開いたのが6年前。いまでは実店舗を構え、写真集を中心に、世界のアートブックを紹介している。交通の便があまりよくないエリアで、土日だけの限定営業という悪条件にもかかわらず、週末になると10代~20代の若者を中心に刺激を求める人々で小さな店内がいっぱいに。近年では市内でアートブックフェアも開催されるようになり、さらなる盛り上がりを見せていることから、いずれは出版機能を備えたいと考えているそうだ。
写真:森山将人(TRIVAL、P1~3、P5~8)、坂本陽子(P4)、松井聡美(P8) 編集&文:猪飼尚司