退職金2,000万円でほくほく、お高いワインを小脇にいそいそ帰宅の60歳会社員。幸せ間違いナシの老後のはずが…馴染みの銀行の勧めで疑いなく始めた〈シニア資産運用〉で大転落「震えが止まらない」【FPが解説】
長年の勤務に対して支払われる退職金。少しでも増やして老後の生活を盤石なものにしたいと運用を考える人も多いでしょう。しかし、くれぐれも慎重に行いましょう。失敗している人は決して少なくありません。本記事では、Kさんの事例とともに、シニア世代から始める投資の注意点についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
定年退職を迎えた元部長のもとへ届いた「一通の封書」
Kさん(60歳)は、大学を卒業後に新卒で入社した会社を38年間勤め、60歳の退職の日を迎えました。長いあいだにはいろいろな人にお世話になり、たくさんの経験を積むことができ、昇進は比較的早く、50代は事業部長として部下をまとめる立場に。57歳で役職をはずれましたが、自分の役割を務め、後輩の社員からは信頼される存在でした。 退職の日には、会社の仲間から花束や普段飲み用ではない、いいワインをもらい、感慨深い1日となりました。定年退職といっても翌日からは再雇用で勤務するので、会社から出るわけではないのですが、部署が変わるので、なじみ深い人達と会う機会は少なくなるでしょう。嬉しくもあり寂しくもあり、新しい仕事に向かう緊張感などが入り混じっていたと、その日を懐かしく思い出すことがあるそうです。 自宅へ戻ると、妻(55歳、パート勤務)と長女(25歳、会社員)、次女(22歳、会社員)がホームパーティの準備をして迎えてくれました。長女も次女もすでに自立し、社会人として働いているなか、わざわざ帰ってきてくれて、妻の手の込んだ料理を食べ、贈られたワインを飲みながらKさんは「俺はなんて幸せ者なんだろう」と喜びに浸っていました。 退職の日からしばらくたったある日、給与や退職金が振り込まれる銀行から封書が届きました。Kさんがなんだろうと開封してみると、なかには「退職金運用セミナーのお知らせ」と書いた案内が入っていました。「退職金運用セミナーか。退職金の運用については考えないといけないと思っていたところだ。“ご夫婦で”とかいてあるし、この機会に2人で参加してみるのも悪くないな」Kさんは、“資産運用セミナー”に類するものはいままで1度も参加したことはありません。投資に興味はありましたが、自分から口座を開設するなど、具体的な行動に至ったことはなかったのです。 しかし今回の案内は、長いあいだ付き合いのある銀行からのものだったこともあり、Kさんは軽い気持ちでセミナー参加の申し込みをしたのでした。
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