「知的障害のある芸術家に正当なロイヤリティを支払う」―双子の兄弟が仕掛けるしなやかなゲームチェンジ : 盛岡ヘラルボニー LVMHと組み異彩作家の才能を世界へ発信
世界を舞台に
ルイ・ヴィトンなどを傘下に持つフランスの高級ブランドLVMHが主催し、世界の有望なスタートアップ企業を表彰するアワードで、ヘラルボニーは2024年「従業員体験とダイバーシティ&インクルージョン」カテゴリー賞に輝いた。6部門で89カ国から、1545社の応募があった。日本企業が同アワードを受賞したのは初めて。 アワードの受賞を経て、ヘラルボニーはLVMHの事業支援プログラムのサポートを受けて、海外事業を本格化させる。7月には初の海外拠点としてパリに現地法人を設立する。 また、今年、国内外の障害のあるアーティストを対象にした「HERALBONY ART PRIZE 」(公募期間は終了)を創設した。 審査員には、パリでアール・ブリュット専門のギャラリーを経営するクリスチャン・バースト氏や、東京藝術大学の日比野克彦学長などを迎え、受賞作・入選作の展覧会を、国内最大級のギャラリー・三井住友銀行東館アース・ガーデン(東京)で開催する。 審査員を務めるバースト氏は「ヘラルボニーはアート作品そのものを販売するだけでなく、ライセンシングすることで、より多くの人に彼らの作品が普及できるようなビジネスを展開をしている。身内に障害者がいることもあり、もうけ主義に走るのではなく、障害者に真に寄り添う誠実な経営だ。パリでも、ぜひ、新風を吹き込んでほしい」とエールを送る。 子どもの頃、兄に向けられた「かわいそう」の言葉への違和感がすべての始まりだった。最も身近な家族への思いから出発したヘラルボニーは、いま、新しい文化を生み出そうとしている。「障害者」を「かわいそうな存在」と思いこんでいる人たちが、ヘラルボニーを介して異彩作家の才能に触れることで、認識を変える。そんな未来は近いと文登さんは思わせてくれた。 撮影:三輪憲亮
【Profile】
松田 文登 株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEO 1991年岩手県生まれ。東北学院大学卒業後、大手ゼネコンで被災地の再建に従事。その後、双子の弟・崇弥と共に、ヘラルボニー設立。盛岡を拠点に自社事業の実行計画及び営業を統括。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 Under 30 Japan 2019」受賞。 川勝 美樹 ジャーナリスト。米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士課程修了。米系通信社にて経済記者、英系医療機器業界誌や米系住宅専門webマガジンの日本語版編集長などを経て、現在は建築・介護・福祉・アート分野を幅広く取材。「アートx福祉」をテーマにした東京藝術大学の履修証明プログラムDOOR7期生。