10月からの「在職定時改定」で気を付けたいポイントとは
在職老齢年金制度
年金収入と給与収入の調整は「在職老齢年金制度」に基づいて行われます。この制度は、収入の合計が一定以上になる場合に年金の一部または全部を支給停止するものです。 ●在職老齢年金制度の仕組み 具体的な仕組みは以下の通りです。 1.賃金と年金の合計が50万円を超えた場合基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2の式によって算出された額が、月々の受給できる年金額となります。※基本月額とは、従来支給されるはずだった年金の月額です※総報酬月額相当額とは、月の給与と賞与など臨時の報酬から算出された、社会保険を計算する際の等級額です 2.賃金と年金の合計が50万円を超えない場合、年金の支給停止はされません。 年金局の調べによると、2021年度末時点で年金の支給が停止されている人数は約49万人という結果が出ています。 この数字は、65歳以上で在職しながら年金を受給している人口の約17%です。今後、現行の制度のまま高年齢世代の就業者数が増加していくと、この支給停止者数もさらに増加していくことが見込まれます。 ●在職老齢年金制度の改正の検討 在職老齢年金制度は、時代の流れに応じて何度も改正されています。近年の主な改正として は、下記のようなものがありました。 ・60歳から65歳までの年金停止基準を65歳以降の基準よりも厳しかったものが、全年齢で統一される ・支給停止の基準となる額が47万円から50万円に引き上げられる そして現在、政府は「65歳以上の支給停止基準額のさらなる引き上げ、および完全撤廃」といった改正を検討しています。 2024年に行われた財政検証では、支給停止基準額を引き上げ、または支給停止を完全撤廃した場合についての検討を行い、改正した場合の支給停止者数の見込みと新たに年金の給付が必要になる増加額を試算しています。 基準額の引き上げや制度の撤廃を行うことで、今は支給停止を避けて就業時間などを控えている高年齢層の労働意欲が増え、日本全体の労働力増が期待されています。 一方で、年金額の調整対象者が少なくなる、または停止されなくなるため、現在は停止されている部分の年金分を政府が支給することとなり、財政面での負担が大きな課題となっています。