おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第38巻編】~新章突入! かつての『キン肉マン』を倒すためにゆでたまご先生が選んだ方法~
しかし、その大役を果たしたテリーマンはもはやボロボロ。これ以上闘えるのか?......というところでようやく、待ちに待った主人公のキン肉マンが助っ人に参上するのです! とはいえ、敵はまだまだ大量にいる上、頼みのロビンマスクやラーメンマンたちは未だ間に合う気配なし。それでも構わず、完璧・無量大数軍たちは新たな闘いを求めて既に全世界に散らばった。マジでどうなるんだ......というところで、この巻の最大サプライズ! ステカセキング、ブラックホールらまさかの悪魔超人軍乱入をもって次巻、大混迷の激アツ団体対抗戦へと物語は突き進むのですが......特筆すべきはラストでこれほど怒涛の急展開を迎えてまだ、この巻では敵の真の目的が見えてこない!? 物語の全貌が明かされていないのです。 それを踏まえてあえて斜に構えた言い方をしますと、かつての作風が「キン肉マンGo Fight!」であったとすれば、今の作風は「キン肉マンWhy Fight!?」なのではないでしょうか。かつての『週刊少年ジャンプ』時代の勢いそのままなぞらえているようでこの新章、読者に考察の余地を残し続ける今風の作り方をも同時にされているのは実に興味深いところです。 登場する超人たちが皆、どこを目指して闘っているのか、目的地が一切わからない!? この新たな時代に蘇(よみがえ)った『キン肉マン』が闘う理由とは......⁉ そんな見えない先の展開を予想していく楽しさ、物語に翻弄される喜びを、皆さまと共有できるようなレビューを次巻以降も続けていこうと思っております。 今回は記念すべき新シリーズ1巻目ということで、かつてない長文になってしまったことをお詫び致します。 それでは引き続き、毎月の更新にお付き合いの程、どうか皆さま、何卒よろしくお願いいたします!! こんな見どころにも注目! この巻で僕が密かに大好きなのがこの一コマ。自害を決意したマックス・ラジアル最期の瞬間を同胞として見守る完璧・無量大数軍の面々、という非常に冷酷冷徹にしてシリアスな場面ではあるのですが......。犬やらロボやら魚やらがこんな画角で、並びで、表情で、なんの違和感もなく同時に入ってくる絵面は、他作品では何が起ころうと絶対にありえないと思うのです! しかし、どれほど時代を超えようと、それを平然とやってのけて通用するのがこの美しき『キン肉マン』世界。こんなに素敵なワンダーランドをイチから構築して完成させたゆでたまご先生のスゴさを、全世界のクリエイターはもっと知るべきだと僕は本気で思います! ●おぎぬまX(OGINUMA X)1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中 漫画/おぎぬまX 構成/山下貴弘 ©ゆでたまご/集英社