<年俸バブル>が違法賭博詐取事件を引き起こした?広岡達朗「カネの力だけで強化をしたら必ず衰退する。その見本がもちろん…」
2024年9月、阿部慎之助新監督率いる読売ジャイアンツが、4年ぶり39度目のセ・リーグ優勝を果たしました。大混戦となった2024年シーズンでしたが、巨人OBで野球解説者の92歳・広岡達朗さんは「巨人が強くなったのではない。他がだらしないのだ」と厳しく評価しています。そこで今回は、広岡さんの著書『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』より一部引用、再編集してお届けします。 【書影】4年ぶりリーグ優勝“新生巨人”の1年目を92歳・大御所OBが激辛総括!広岡達朗『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』 * * * * * * * ◆カネまみれの大リーグは「他山の石」だ 世界を驚かせた大谷翔平の元通訳巨額賭博詐取事件の問題は我々の想像の域を超えているから真相はわからない。 しかしケタ外れの大金がなぜ、どこに行ったのか、米連邦検察の捜査が進めば、大谷の周辺だけでなく、拡大を続けるアメリカのスポーツ賭博の真相がわかるにつれていろいろなものが出てくるだろう。 私は日本人選手や大リーグの年俸バブルによるカネの問題には興味も関心もない。だが、1988年に私が主催した「日米ベースボールサミット」で特別講師に招いた大リーグの幹部たちから聞かされた「日本は大リーグのような高額の複数年契約だけは真似しないほうがいいよ」という話をあらためて思い出す。 当時、「複数年」といえば2年契約が普通だったが、その後、大リーグではスーパースターの2ケタ年契約が常識になった。しかも私が驚いたのは、大谷と山本由伸を長期契約で獲得したドジャースが、2024年の開幕戦が始まった3月28日に捕手のウィル・スミスとも10年契約を更新したことだ。
◆強打の捕手とも10年再契約したドジャースの怪 スミスはドジャースで4番の経験もある29歳の強打者だ。私が現役の時代、強豪ヤンキースにヨギ・ベラという強打者がいたから、強打の捕手がいても驚かないが、選手を育てる立場の監督経験者としては「これでいいのか」と釈然としない。 これではドジャースは、スミスが40歳になるまでの10年間は控えの捕手やライバルを育てる必要はないということになる。そして第一、次の正捕手を目指している有能な人材が「俺はこのチームではレギュラーになれないんだな」とあきらめて、他チームへの転職を目指すことになる。 そうなればチーム強化に最も必要な、競争による若い選手の育成ができなくなるし、次の捕手の人材がいなくなるではないか。 そんなときはトレードで選手層を維持すればいい、というだろうが、どのチームもそんなことをすれば、野球がすべてカネの世界になってしまう。どこもカネの力でチームを維持強化するようになれば、プロ野球は堕落し、やがてすたれるだろう。
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