【どうして】クルマは"太る"のか? 同じ車名でいつの間にか3ナンバーになってしまう理由がツライ!!
今後も増え続けるSUVには大きくなる理由が2つある
そして今後もSUVの売れ行きは増え続ける。理由は2つあり、まずは外観の存在感と広い天井による車内の広さを両立させていることだ。SUVはカッコ良くて実用的だから人気のカテゴリーになり、これ以上の売れ筋カテゴリーは今後登場しないだろう。 2つ目の理由はEV(電気自動車)の増加だ。EVでは駆動用リチウムイオン電池を床下に搭載するから、背の高いSUVと親和性が高い。 こうなるとSUVのボディも大型化が続く。特にSUVスタイルのEVが駆動用リチウムイオン電池を床下に搭載するには、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も長い方が有利だ。1回の充電で走行できる距離を伸ばそうとすればボディも拡大する。 ただしこのようなサイズアップは、さまざまな犠牲を生み出す。運転がしにくくなり、移動に要するエネルギーも増えて価格も高まる。EVでは、前述の通り1回の充電で走行可能な距離を伸ばそうとすれば電池と併せてボディも拡大され、車両重量も増えて大きなモーターが必要になる。その結果、さらに大容量の電池を搭載してボディも一層の拡大を招いてしまう。
サイズの小さいホンダN-BOXや日産ルークスでも高い安全性を確保
その一方でボディサイズの限られた軽自動車を見ると、N-BOXやルークスが、J-NCAPのテストで最高ランクの5スターを獲得している。軽自動車のボディサイズは、1998年に現行規格が導入されてからは拡大されていない。ボディを拡大しなくても、安全性を向上できるのだ。 EVでは、1回の充電で走行可能な距離を伸ばすと、拡大の悪循環が生じて環境性能の向上率は悪化する。従って日常的な移動にはコンパクトなEVを使い、遠方への外出では、駅までEVで出かけてそこから先は公共交通機関を利用するパーク&ライドが好ましい。EVの世界観は、クルマを効率良く使うことだから、ユーザーに不便が生じることもある。もはやフルモデルチェンジの度にボディを大型化する時代ではなくなった。 文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。 写真/日産、ホンダ