「2024年が東京都のインクルーシブ教育元年に」と期待の声 都教委が「支援員」活用で区市町村支援を検討
障害のある子どもが地域の小中学校に通ったときのサポート役となる「支援員」に関して、東京都教育委員会が区市町村に対する支援策を新たに検討していることがわかった。現状では、地域の小中学校への就学を希望する障害児の保護者が、自治体から「支援員をつけることはできない」などと言われてあきらめるケースも少なくない。新たな策によって従来に比べ支援員の配置が行いやすくなれば、障害のある子供や外国にルーツのある子供など、あらゆる特性を持つ多様な子どもたちが同じ教室で共に学ぶインクルーシブ教育の進展につながるのではないか、と期待する声も出ている。 12月中旬、東京都議会一般質問で龍円愛梨議員(都民ファースト)の質疑に対し、浜佳葉子教育長が「教育上、特別な支援を必要とする児童生徒の就学については、可能な限り本人や保護者の意向を尊重することが重要」とした上で、「『特別支援学校への就学が適当な児童生徒』について、本人や保護者が地域の小中学校で学ぶことを希望する場合には、支援員による日常的なサポートが必要。都教育委員会は、今後、こうした支援員の活用などによるインクルーシブな教育をより一層推進するため、区市町村への必要な支援策を新たに検討する」と答弁した。 国連・障害者権利委員会は昨年9月、障害のある子どもを通常の学びの場から分離しているとして、インクルーシブ教育の推進に向けた取り組みを進めるよう日本政府に勧告したが、東京都では、障害のある小中学生の9割以上が特別支援学校や特別支援学級に在籍。都内でも国立市のように「フルインクルーシブ教育」の実現を目指し取り組みを進めている自治体も例外的にはあるが、一般的には多様な子どもたちが共に学ぶのではなく分離された場所で学ぶのが当たり前となっている。 今回質問した龍円議員は、インクルーシブな教育が進まない理由の一つとして「教育的な観点とは別に、予算上の理由で特別支援学校へと押し出す見えない力が働いている。スペシャルニーズのある子どもが都立の特別支援学校に行けば区市町村の負担はゼロ。一方で地元の学校で受け入れるとなると、合理的配慮や支援員などの予算は区市町村がすべて負担する必要が出てくる。この予算上の理由が、インクルーシブ教育推進のボトルネックになっている」と説明。 その上で、今回の教育長の答弁について「都立特別支援学校への就学が適当とされる児童生徒を、区市町村立の小中学校で受け入れた場合に『支援員』を配置するための支援策を検討していると聞いている。実施されれば、スペシャルニーズのある子が、よりインクルーシブな環境での学びが可能になるとともに、支援員を配置することができないなどといった予算上の理由で子どもを地域の学校から押し出すというケースが減る可能性が高い」と評価し、「2024年が東京都のインクルーシブ教育元年になるのでは」と期待感を示している。