「2024年が東京都のインクルーシブ教育元年に」と期待の声 都教委が「支援員」活用で区市町村支援を検討
支援員の役割の再検討を 東京大・小国喜弘教授
インクルーシブ教育を研究する東京大学バリアフリー教育開発研究センター長の小国喜弘教授は、「こうした取り組みをインクルーシブ教育の進展につなげていくために、考えなければいけないことがある。その一つが『支援員のあり方』だ」と指摘する。 小国教授は、障害のある子どもを受け入れている地域の学校を数多く視察しているが、その中で支援員が四六時中、対象の子どもの横にぴったりと張り付いて離れない様子をよく目にするという。「通常学級にいるのに支援員が他の子どもたちを防ぐ『壁』になり、クラスメイトと関われないまま一日を過ごしてしまう当事者も少なくない」と話す。 授業中にも問題はあるという。「支援対象の子どもが少し体を動かしたり、声を出し始めたりすると、その段階で支援員が体を強く押さえ込んだり、否応なく教室の外に連れ出したりといった対応を取るケースもよく見る。授業をしている教員に遠慮するあまり、『子どもが授業の邪魔をしないように見守る』という意識を強く持ちながら働いている方が非常に多い印象だ」。障害当事者の子どもを支援するための存在が、監視するための存在になってしまっているのだ。また、支援員がいることで、教員が障害のある子どもを任せっきりにして関わろうとしないケースも多いという。 このような実情を踏まえて「ただ支援員がつくようになれば問題が解決するわけではない。今のままの支援員のあり方では、図らずも『教育虐待』のような状況が増えるだけになる可能性すらある」と述べる。 それでは、支援員に求められるのはどのような役割なのか。 小国教授は「カナダやイタリアなどインクルーシブ教育先進国では、友達と友達との関係をつなぐのが本来の役割だと考えられている。たとえば、休み時間などは少し遠くで見守って、障害当事者の子どもがうまく友達の輪の中に入っていけるように、そっと背後から支援することなどが考えられる」と述べる。 また、もう一つ重要なのが、障害当事者の子どもの自立をどう助けるのかという視点だという。「ここでいう自立とは『自分一人でなんでもできるようになる』といった自立ではなく、障害学で考えられている『依存先を増やす』という意味での自立。自分のやりたいことを実現するために、誰かに『頼れる力』を育てることは非常に大事なことだ。子どもたちがそのような力をつけるために、今、どのような支援が必要なのかを考えながら関わっていかなければいけない。予算的な取り組みだけで終わるのではなく、新しい支援員のあり方を考えることができるかどうかに注目したい」としている。(取材・文/ジャーナリスト・飯田和樹)