気象庁「今年は暖冬にならない見通し」…〈気温〉が景気に与える影響【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
今後の見通しで、ラニーニャ現象発生確率が低下
10月10日発表の「エルニーニョ監視速報」で、9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値偏差が0.2℃とエルニーニョ現象でも、ラニーニャ現象でもない平常状態であることがわかりました。その後に発表された10月上旬分の海面水温の基準値偏差は0.0℃、10月25日発表の10月中旬分の基準値偏差は0.3℃となりました。 気象庁はエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5ヵ月移動平均値が6ヵ月以上続けて0.5℃以上のマイナス幅となった場合をラニーニャ現象と定義していますが、その目安の0.5℃に届いていません。 一般的には、エルニーニョ現象が発生すると冷夏・暖冬に、ラニーニャ現象が発生すると酷暑・厳冬になりやすく、天候要因による季節商品の売り上げを通じて、消費などに影響をおよぼすことが多いですが、平常状態ならば景気には中立的ということになりやすいです。 「エルニーニョ監視速報」で、今後のラニーニャ現象発生確率が低下 10月10日発表の「エルニーニョ監視速報」で、今後に関し、平常状態の可能性が50%、ラニーニャ現象が発生する可能性が50%と同程度になりました。現在、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあり、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりますが、その状態は長続きしないとされています。 以前の見通しをみると、5月10日発表のエルニーニョ監視速報で、今後(その後)に関し、平常状態の可能性が40%、ラニーニャ現象が発生する可能性が60%になって以降、9月10日まで5ヵ月連続でラニーニャ現象が発生する可能性が60%になっていました。
コロナ禍前を上回った、岐阜・長良川鵜飼の観覧船・乗船人員
今年は西日本の気温が高かったといえます。24年の姫路の最高気温35℃以上の猛暑日は26日で、平年を20日ほど上回りました。 猛暑の中で9月の姫路城の入場者は、11万7,361人で23年9月の11万9,377人を1.7%下回り、8月に続き2ヵ月連続マイナスになりました。コロナ禍前の19年9月11万9,957人も2.2%下回りました。24年の猛暑日がゼロだった函館の五稜郭タワー・入場者は前年同月比+32.8%、19年9月比+20.5%と好調だったことと対照的です。 毎年5月11日から10月15日がシーズンの、24年の毎月の岐阜・長良川鵜飼の観覧船・乗船人員をみると、23年の数字を5月から10月の6ヵ月すべてで上回りました。コロナ禍前の19年を5月から9月の5ヵ月間は下回りましたが、10月で初めて、コロナ禍前を上回ることになりました。この背景には、気温など気候面の落ち着きもあるのではないかと思われます。 ※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。 宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト) 三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
宅森 昭吉