来年3月末で路線バス廃止に 背景に人件費や燃料費の高騰、「2024年問題」 市は代替手段の検討を急ぐが、廃止になれば公共交通の空白地域が生まれる可能性
イーグルバス(本社・埼玉県川越市)は19日、路線バスの「日高・飯能路線」のうち埼玉県日高市内で運行する区間を来年3月末で廃止すると発表した。廃止の要因として人件費や燃料費の高騰による赤字拡大、運転士不足が懸念される「2024年問題」を挙げている。日高市は代替手段の検討を急ぐが、廃止になれば公共交通の空白地域が生まれる可能性がある。 路線バス運行100年、飯能を支えた歴史 昔は馬車、現在は最長27キロ1時間のコースも
日高・飯能路線は日高市と飯能市を南北に結び、主にJR武蔵高萩駅から高麗川団地を経由して西武鉄道飯能駅を結ぶ路線と、JR高麗川駅を結ぶ路線で構成される。同路線が廃止されることで、日高市から飯能市方面へ向かう沿線住民の移動手段がなくなる。飯能市内の区間は運行を続けるが、運行本数やダイヤは大幅に改定される予定。 日高市が2023年11月に行った調査によると、同路線の平均利用者数は1便当たり14・0人で、飯能市区間に集中しているという。 イーグルバスは廃止の理由として利用者数の減少や人件費、燃料費の高騰による赤字拡大▽車両の老朽化▽運転手の人手不足―を要因に挙げる。路線の経営は赤字が続いており、23年度は約4千万円の赤字。累計赤字は約2億円に上るという。同社は今年4月に路線の全面廃止を飯能市、日高市に通知。両市からの申し出を受けて赤字の補填(ほてん)などを条件に交渉を行ってきたが、飯能市のみと協議を続けることになった。
日高市によると、補助金などの措置をしても「路線全ての維持はできない」というイーグルバス側の申し出を受けて協議を断念したという。市の担当者は「飯能市までつながるというのが重要な部分だった」と話した。23日の定例会見で谷ケ崎照雄市長は「19年間にわたって市民の日常生活に使われていたので影響は大きい。撤退を大変残念に思う」と話し、「現在新しい交通機関を確保しようと、どんな移動手段がいいのかというのを検討中だ。その中で廃止になるので、なるべく早く対応を進めていきたい」と説明した。 イーグルバスによると日高・飯能路線は06年度に西武バスから同社に引き継がれた。北欧文化を体験できる施設メッツァ(18年)やムーミンバレーパーク(19年)の開業で業績は一時改善傾向にあったが、新型コロナの感染拡大後は再び大きく業績が落ち込んでいた。 日高市では1996年から市内循環バスを運行していたが利用は限定的で、2007年に廃止している。
日高市中心地にはイーグルバスのほかに、飯能駅方面と毛呂山町の埼玉医大方面を結ぶ国際興業の路線バスが運行している。