メガヒットを生み出した「殻を破る思考法」とは? 伝説のマーケターの発想術
和佐さんが解き明かした「イノベーションの法則」
しかし一体どうすれば、これまで存在しなかったような新しいイノベーションを生み出すことができるのでしょう? そのヒントとして和佐さんが引用したのは、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが1991年に定義した「イノベーションとは新結合である」という言葉。新しい価値を創造するには、無から何かを創るのではなく、すでにある「点」と「点」をいかに結びつけるかが重要だと言います。 「マーケティングの現場でイノベーションを実践するうちに、消費者にとっての普遍的な便益は限られていることに気づいたのです。火起こしからChatGPT、メロンパンの皮まで、あらゆるイノベーションを時系列で並べて分析した結果、ほぼ42個の便益に集約できることがわかりました」 和佐さんの「イノベーションの42の便益」については、経営学者の入山章栄さん(早稲田大学ビジネススクール教授)も「新たな発見だ」と太鼓判を押してくれたそう。そしてこの発見は、和佐さんにさらなる気づきをもたらしました。 「自分たちの商品やサービスを、この42の便益に掛け算していくことで、さまざまなイノベーションにつながるのではないか? コネクティングドット(点と点をつなげる)を繰り返すというのが、私が見出したイノベーションの方程式です」
イノベーションを生み出す4つのポイント
和佐さんによると、イノベーションの基礎は以下の4つのポイントからなるといいます。 【イノベーション4つの基礎】 持続的イノベーションにつながる現状の問題点・インサイトの気づき イノベーションのアイデア構築(コネクティングドット) イノベーションの実現を競合より早くスケールを持って実施 イノベーションの価値は普遍的 たとえば、かつて和佐さんが手掛けたファブリーズ。「臭いを閉じ込める技術×ドライクリーニングできない大型のもの(便益:現行問題の解決)」というコネクティングドットから構築されています。人々を驚かせるような画期的な新商品も、実は身の回りのモノや体験、できごとの掛け算で生まれているのです。 また「檸檬堂」も、日本コカ・コーラの強みである「炭酸とフレーバー」と缶酎ハイ市場の問題点を掛け合わせて誕生しました。当時、缶チューハイの多くは「アルコール度数縛り」でブランドが展開されており、レモンサワーはフレーバーの1つとされていました。 そこで和佐さんは、「レモンサワー専門店が出している味を、そのまま缶に詰める」というコンセプトを考案。レモン果汁がしっかり入った職人気質の「檸檬堂」という位置づけでブランドを大ヒットさせ、新たなマーケットを創出したのです。