トヨタが欧州でEV強化にアクセル、現地トップとスポーツカー責任者が明かした戦略
▽独自イベントの参加者は300人以上 トヨタは11月下旬、欧州法人の拠点があるベルギーで年末恒例のメディア向けイベント「KENSHIKI(見識)」を開いた。トヨタはこの数年、欧州の主要な自動車ショーに出展せず、「独自イベント」で新型車をアピールしている。イベントには欧州各国から300人以上が集まった。全体のプレゼンテーションで記者の前に並べたコンセプト車を全てEVとし、トヨタの本気度を示した。 欧州は世界の中でも特に環境意識が高い。欧州連合(EU)は2035年にエンジン車の新車販売を原則禁止とし、イギリスもそれにならう。それまでに、EVと燃料電池車(FCV)を合わせたZEVに置き換えなければいけない。トヨタは得意とするHVやPHVの技術を磨きつつ、EV化比率を段階的に高める戦略を描く。高級車ブランドのレクサスは2035年にEV専門となるが、欧州では5年前倒しでの実現を目指す。 ▽マルチパスは「トヨタだからできる戦略」
一部で「トヨタはEV化に出遅れ、欧州で苦戦している」というイメージが持たれているが、足元の販売は好調だ。欧州自動車工業会によると、欧州全域の2022年の乗用車登録台数が前年比4・1%減の約1130万台と落ち込む中で、ブランド別で「トヨタ」は7・6%増え、フォルクスワーゲンに次ぐ2位に躍進した。 他のメーカーが部品の半導体不足からの生産回復に手間取るのを尻目に、安定供給に筋道をつけたためだ。さらにガソリン価格の高騰も追い風となった。燃費性能の高いHVやPHVの人気が高まり、マルチパスウェイ戦略が奏功した。 自動車業界の関係者は「マルチパスウェイはあらゆる方面に継続的に投資するのでお金がかかる。規模の小さいメーカーはEVに全力投球しなければならず、資金力のあるトヨタだからこそ取り得る戦略だ」と解説した。