トヨタが欧州でEV強化にアクセル、現地トップとスポーツカー責任者が明かした戦略
―将来的に欧州でEV生産は。 「地産地消の考え方が根底にあることは事実です。お客さまと需要があるところでクルマづくりをして地域社会に貢献するという意味で、しっかり考えていくというのはその通りだと思います。欧州でビジネスをさせていただき、欧州の産業に貢献するという基本な考え方もあります」 ▽EVスポーツカーの課題は車高と走行性能 トヨタのスポーツカーブランド「GR」の渡辺正人GR車両開発部長 ―EV化の波はスポーツカーにも押し寄せている。ガソリン車と比べて難しい点は。 「背の低いパッケージを車として実現する点です。EVの電池は車のお尻の下に積まれていて、そのままだと背が高くなってしまう。スポーツカーは空気抵抗を小さくし、低重心で動きを良くするものです。余分な電池を載せながら全高を変えないために、どこを小さくすればいいのかというのが非常に難しい」 ―重量の問題もある。 「一般的な航続距離のバッテリーは500キロくらいする。エンジンなど要らなくなるものとの差し引きを考えても単純に300キロくらい重量が増えます。スポーツカーにとって軽さは命です。遠心力は重量と関係して増えてしまうので、同じスピードでコーナーを駆け抜けようと思うと軽い方が有利です。300キロ重くなった状態で高い走行性能を確保することは大きな課題です。タイヤやサスペンションの性能、ボディーの剛性も良くしないとエンジン車のようなスポーツドライブはやりにくくなる」 ―EUが2035年にエンジン車を全面禁止する方針を転換し、二酸化炭素と水素を原材料として製造する「合成燃料」を使用する車の販売継続を認める。
「EVでは楽しみが減ると思われているお客さまにとっては、合成燃料は大きな可能性であると思います。GRブランドとしてはすごみのあるエンジンが商品の大きな特徴でもあるので、EUの新しい方針は、可能性が広がる良いことだとポジティブに受け取りました」 「ただ、いつまでもエンジン一本やりではいけないとも思っています。エンジンへのこだわりはわれわれの魂の一つなので捨てませんが、EVやHVなどで楽しくモータースポーツができる、サーキットで走っても強い車というのはどうなんだという研究もしっかりとしていかないといけない、と考えています」 ―中国のEVメーカーが欧州市場に進出。エンジン車で培ったノウハウで差異化できるか。 「われわれが長年培ってきた走りの乗り味みたいな数字に表れない感覚のところで違いを出す要因になるのは間違いないです。一方で、EVはあまり経験のないメーカーが造ってもそれなりに良いものができます。500キロの重量物が床下の一番低いところに搭載されているものですから、こだわりなく普通に車を造ってもある程度、低重心になります。ノウハウを積み重ねてきたメーカーと新興メーカーの差がEVになった時に、急に縮まったというのが実態です」 「ただ、完全に追いつかれたとは思っていません。なんか気持ちいいよね、使いやすいよね、安心感があるよねだとか、そういった無形の価値のようなものが残っていると思います。ハンドルを握ると楽しくてワクワクするクルマづくりをしていきたいです」