「認知症」はワクチン接種で防げる!? 肺炎球菌ワクチンでリスク減少 調査で明らかに
研究を実施した背景とは?
編集部: 今回の研究がおこなわれた背景には、どのようなものがあったのでしょうか? 中路先生: 認知症の高齢者は世界中で増え続けており、日本では要介護になる最多の原因となっています。認知症予防には禁煙や運動、社会的つながりの維持が効果的であると考えられている一方、「インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹などのワクチン接種を受けた高齢者は、ワクチン接種を受けていない高齢者と比べて認知症が少ない」という報告が最近相次いでいます。ここに研究グループは着目しました。 アメリカ、イギリス、台湾の高齢者を対象にした報告の中で、認知症の減少と関係するという結果が最も多かったのは、インフルエンザワクチンでした。しかし、これらの国々では、多くの高齢者がインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの2つのワクチンを接種しているため、どちらのワクチンが認知症の減少と関係しているのか不明でした。そのため、研究グループはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンのどちらが認知症の減少と関係するのかを調べました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 新潟大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。 中路先生: 高齢者の認知症と肺炎球菌のワクチン接種の関連を明らかにしたことは、素晴らしいと考えます。しかし、肺炎球菌のワクチン接種が認知症予防に直接効果があるのかはわかりません。また、肺炎球菌のワクチン接種がどのようにして認知症を予防するのかの仕組みについても現時点で不明です。これらについて、さらなる追加研究が望まれます。
編集部まとめ
新潟大学らの研究グループは、「約1万人の高齢者を3年半追跡した結果、肺炎球菌ワクチンを接種していた人は接種しなかった人と比べて認知症を発症した割合が23%少なかった」と発表しました。認知症をどう予防するかについては、国を挙げて取り組むべき大きな課題なので、今回の研究結果も注目を集めそうです。
監修医師:
中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。