目の不自由な男性のバス通勤、10年以上支えた児童たちとの交流が教科書に…「やさしい気持ちは広がっていく」
目が不自由な男性のバス通勤を10年以上支えた和歌山市の児童らの取り組みが、今年度から使われている小学3年生の道徳の教科書に取り上げられた。読売新聞の記事で交流を知った教科書会社「日本文教出版」(大阪市)が「思いやりを学ぶことができる」として採用。全国約4000校で使われているという。
男性は元和歌山市職員、山崎 浩敬(ひろたか)さん(62)。32歳の時に難病の網膜色素変性症と診断された。視力をほとんど失い、1人で不安だった通勤を支えたのは、同じバスで通学する同市の和歌山大付属小の児童らだった。
ある女児が毎日、バス停で山崎さんに「バスが来ましたよ」と声をかけ、安全に乗降できるように手助けした。女児の卒業後は、後輩の児童に受け継がれた。
山崎さんと児童らの交流を伝える読売新聞の2021年2月の記事を読んだ同社の担当者が山崎さんに依頼し、快諾を得た。
今年度改訂の道徳の教科書「小学どうとく 生きる力3」で、「やさしさのバトン」と題して計4ページにわたり紹介。この中で、山崎さんは「みんなの温かい手でささえてもらうのがうれしかった」と語っている。
同社の担当者は「子どもたちの親切心や思いやりに心を打たれた。交流から学ぶことは多い」と話す。
和歌山市教育委員会は6月5日、この教科書を使った研究授業を実施。市立有功東小の谷口聖人教諭(32)は、3年の児童に「やさしさのバトン」を読み聞かせ、最初にバス停で山崎さんに声をかけた女児やサポートを引き継いだ他の児童たちの思いについて考えた。
児童(8)は「やさしい気持ちは広がっていくと思う。僕も困っている人がいたら率先して声をかけたい」と話していた。