国民民主党・玉木雄一郎×経済学者・高橋洋一「103万壁問題だけではない。ひっそり取られる、”ステルス増税”もぶった切る!」<緊急対談>
所得税が課税され、学生やフリーターが親の扶養を外れる「103万円の壁」。先の総選挙で、国民民主党はこの壁にインフレ調整を加えた「178万円への引き上げ」を訴え、改選前から4倍増の28議席へと躍進を果たした。 選挙後、財務省の意を汲むように政府・与党からは「7.6兆円の税収減となる」と懸念の声があがり、これに呼応するように地方首長からも「自治体財政が破綻する」などと反対論が巻き起こったが、12月11日、自民・公明の与党は国民民主を含めた税制改正3党協議で「178万円を目指して、来年から壁を引き上げる」ことに合意。ところが、同月13日、与党はわずか20万円アップの「123万円への引き上げ」を提示。自民税制調査会の宮沢洋一会長は「誠意を見せたつもりだ」と居直ったかのように発言した。これに対して「話にならない」「誠意は見せてくれなくていいから、数字を見せてほしい」と、憤りを隠さなかったのが国民民主党の玉木雄一郎・衆議院議員だ。 ⇒【図】所得税のインフレ調整(国民民主党製作のデータ) そもそも、近年、国民生活が苦しいのは、江戸時代の「四公六民」を凌ぎ、「五公五民」とも言われる重税が原因だ。実際、全国民の所得に占める税金と社会保障費の割合を示す国民負担率は2022年に48.1%に到達。以降も5割近い水準で推移している。その国民負担率の中身をみれば、控除が縮小、おかしな名前の税など、これ、なぜ取られるの?と疑問になるものも多い……。 サラリーマンの給料から源泉徴収される税金や社会保険料は、ひっそりと天引きされていることから「ステルス増税」との批判も根強いのだ。この問題を先の総選挙で訴えた国民民主党衆議院議員・玉木雄一郎氏と、小泉内閣と安倍内閣で財政改革を主導した異能の経済学者・高橋洋一氏。元財務官僚の2人が税制の闇に斬り込んだ! (※この対談は12月17日発売週刊SPA!から、加筆・修正を加えた、前後編の前編です)
取りすぎで余っている税金で減税を実現する!
玉木:インフレ下では国の所得税収が国民の賃金の伸び以上に上がる……「ブラケットクリープ現象」が家計を痛めつける最大のステルス増税です。今の日本がまさにこれ。だから、手取りを増やしていかないと、生活は苦しくなるばかりです。 高橋:ブラケットクリープ現象の手当てをするのは当然で、やってないのは先進国では日本くらいのものだよ。 玉木:財務省は税収の上振れなどとトボケているが、実際は税金を取りすぎているんです。今年、賃金は大企業を中心に4~5%伸びたが、国の今年8月の税収は前年と比べて25%以上伸びている。おかしいですよ。減税の財源をどこからか手当てするのではなく、国が取りすぎたこのステルス増税の分を国民に返せ、と我々は納税者の立場で言っているんです。 高橋:ところが、「103万円の壁」を178万円に引き上げろと国民民主党が訴えると、政府からは「7.6兆円の税収減となる」と懸念の声が上がり、地方首長からも「自治体財政が破綻する」などと反対論が巻き起こったわけだ。 玉木:政府与党も地方も「税収が減るから大変だ、大変だ」と、税金を取る側の話ばかり……。減税によって手取りが増えれば消費が増え、経済が活性化して税収も増える。ところが、7.6兆円の税収減という試算は自然増収を完全に無視して、減ったものだけを計算しているんです。 高橋:あの試算は、内閣府の「短期日本経済マクロ計量モデル」で行われた。簡単に言えば、ケインズ型の短期需要モデルだから、実は、供給サイドはほとんど分析できない。財務省は減税の経済効果が出にくく、試算には不利に働くのをわかって、あえて使っているんだよ。 玉木:政府の試算では、名目GDP1%の減税をすると、実質GDPの拡大は1年目、2年目、3年目とも税収減の額を大きく下回ることになっている。要は、減税による税収減を景気拡大ではカバーできないというんです。でも、短期モデルで3年先の経済効果なんて出ませんよね。 高橋:そうそう。「103万円の壁」を撤廃すれば、働き控えをしていた人たちが働くようになる。労働時間が増え、労働供給が増加します。これらの経済効果が表れるのは2、3年後。ところが、短期モデルで試算しているのに、「2年目も3年目も景気拡大効果は変わらない」などと、シレッとデタラメを言っている。 玉木:自民税調の後藤茂之・元経済再生担当相は「経済効果による税収増は恒久財源ではない」という迷言まで残したほどです(苦笑)。