作家・本谷有希子「自分の中に“哲学”を持つ。それが美しさになって表れる」[FRaU]
社会や環境だけでなく、自分自身の心に耳を傾け、心地よい生き方を求める時代となった今、美容を特集する上で一つの疑問が。そもそも、「美しさ」とは一体何か――? その答えが知りたくて、ゆるぎない個性を発揮し、さまざまなフィールドで活躍する方に話を伺いました。今回は、作家の本谷有希子さんが考える「美しさ」についてお伝えします。
多様性と言われているけれどそれって、本当?
架空の人物を創造し、リアリティある物語を紡ぎ出す作家であり、また劇作家としても活躍する本谷有希子さん。近年ではテレビバラエティ番組のMCとしても活躍するなど、さまざまなフィールドから“人”を見つめ続けている。「美しさ」について思考を巡らせてみると、その目を通して見える世の中に、どこか少し違和感を覚えるのだという。 「ここ最近は多様性だったり、みんな違ってみんな良い、というような言葉が頻繁に使われるようになりました。ただ、原宿辺りを行き来することが多いんですけど、私の印象としては、街にいる皆さんが割と似たような格好をされているなぁと感じるんですよね。 もちろんこれは外見的な話ではあるけれど、すごく個性がバラバラに見えるという感じを受けにくい気はしていて。もしかするとSNSだったり、手頃に買えるファストファッションが増えていることもその理由のひとつだったりするのかもしれませんね。SNSは良くも悪くも色んな情報を得ることができて、たくさん選択肢を提示してくれる便利なツールだけれど、じゃあすごく自由になったかというとそれだけではなくて。誕生した当初はもっと自由に発言できたり自己表現ができる場だったのが、今では他人からどう思われるのかを気にしすぎて、似たような事しか言わなくなったり、見せられなくなっている側面もありますよね。自由に使えた道具のはずなのに、使う人間の心が不自由になってしまっているというか。ファッションやヘアメイクに関しても、お手本になる参考資料がいくらでも手に入るので、確実にみなさんのセンスは良くなっていて、だからこそ失敗が無いですよね。 多様性って、どれだけバラつきがあるか、ということだったりするじゃないですか。失敗している人がいても『それもいいよね』ってなる方が面白いし、それが個性になったりするものなのに、みんな一律にちょっとお洒落、みたいな。平均的にレベルが上がるのはいいことだけれど、大きく空振りする人も、ずば抜けてホームランを打てる人も減ってしまっているのかなって感じます。そう考えると、自分のビジュアル面での美しさや個性を追求していくことは、逆にすごく難しい時代なのかもしれないですね。