作家・本谷有希子「自分の中に“哲学”を持つ。それが美しさになって表れる」[FRaU]
「私らしさ」じゃなく 「私は何が好きか」を追求する
じゃあ、私がどんな人を美しいと感じるかというと、自分だけの哲学を持った人です。そこで一つ思うのが、『私らしさ』という言葉について。これって『さぁ見つけましょう!』とは言うけれど、その見つけ方は提示されてないことがほとんどで、しんどいと感じている人も多い気がするんですよ。 私は天邪鬼なところがあるので、『私らしさ』ってそんなに絶対見つけなきゃいけないの?って思っちゃう。考えるべきは『私らしさって一体何?』ではなくて、『私が好きなものは何だろう?』ってことなんじゃないかな、と。それがその人の哲学として1本の軸となって、ファッションにしろメイクにしろ、音楽や美術のようなカルチャーにしても、何を選び取ってもその人らしさが表れる。さらにそれらが一人一人違う、アンバランスで多様な『美しさ』になるんじゃないでしょうか。 かつてはふっくらしている女性が魅力的だったり、ある時はスリムだったりと、見た目の美しさは古くから変わり続けてきているけれど、精神性はある意味不変的だと思うんです。だからこそ、自分らしい哲学を持って、この時代に完全に乗っかって楽しみたいですよね」
本谷有希子(もとや・ゆきこ) 1979年石川県生まれ。2000年に『劇団、本谷有希子』を創立し、劇作家や演出家として活動を開始。2002年に作家としてデビュー以降、2016年には小説『異類婚姻譚』で第154回芥川龍之介賞受賞。近年は自身の小説を舞台化する試みにも取り組む。 ●情報は、FRaU2023年11月号発売時点のものです。