なぜ茶室の床の間には掛け軸があるのか?千利休が「茶の湯において、掛け軸ほど大切な道具はない」と伝えた理由
2020年に文化庁が1,500人に対して行った国民意識調査によると、茶道を経験したことがない人は全体の約6.5割だそうです。そんな茶道を、日本だけでなく世界にも広めようと活動しているのが、茶道家(裏千家教授)の竹田理絵さん。今回は、茶道にまつわる教養を紹介していただきました。竹田さんは、「茶室に掛けられる掛け軸には、禅の言葉『禅語』が書かれています」と言っていて――。 【イラスト】どのくらい知っている?掛け軸の部位の名前 * * * * * * * ◆茶道に愛される禅語 茶室の床の間には、墨蹟(ぼくせき)(禅僧による筆跡)の掛け軸が掛けられています。さりげなく掛けてある掛け軸ですが、実は茶室の中で一番「格」が高い存在です。 千利休も「茶の湯において、掛物ほど大切な道具はない」と伝えています。 茶室に掛けられる掛け軸には、禅の言葉「禅語」が書かれていますが、よく知られている言葉はやはり「一期一会」でしょうか。 「一期」は一生、「一会」は一度の出会いという意味ですが、この言葉は利休の弟子である山上宗二(やまのうえそうじ) が最初に記したと言われています。 何事においても「人生で一度きり」と考えることで、私たちは目の前の相手に誠意を尽くすことができます。
◆「一座建立」 また、「一座建立(いちざこんりゅう)」も茶道では大事な禅語の一つ。 亭主による心尽くしのもてなしにより、亭主とお客様が心を通わせ、お互いでその場を心地よい空間にする一体感を指した言葉です。 茶道に限らず、日常生活でもお互いを尊重し、気持ち良く過ごすための場作りを心がけることは大切なことだと思います。 自分をさらに高める教養 茶道を始める際に必ず揃える茶道具の一つである扇子。茶道用の扇子は一般的なものよりも少し小さく、扇ぐためには使いません。茶道で使う扇子には「結界」の意味があり、扇子を自分の前に置くことで相手への敬意を示します。そのため、掛け軸の前でも筆者の禅僧に敬意を示すために扇子を前に置き、一礼します。 海外の方に喜ばれる教養 昨今、掛け軸は海外の方が購入するお土産としても人気が高まっています。縁起物である富士山や鶴などの風景が描かれた掛け軸もありますが、和紙に墨で書かれたシンプルな禅語の掛け軸は、その言葉と共に、日本での思い出になるようです。