目が開かない…なのに年金を打ち切られた 「眼球使用困難症候群」、厚労省が誤り認め再審査へ
新たに年金を申請した9人も、時効による不支給1人を除き、一時金である「障害手当金」(最低保障額で約122万円)の支給しか認められなかった。以前は、いったん手当金と判定されても不服申し立てをすると、年金が支給されていた。ところが、昨年から不服申し立てをしても覆らなくなったという。 ▽不合理な仕組み 障害年金が出なくなった理由は何なのか。 そもそも、眼球使用困難症は年金の基準上、「軽い障害」とみなされていて、基本的に手当金の対象とされている。症状が固定していない場合は年金が支給されるが、1~3級の等級のうち最も軽い3級と決まっている。その分、金額は少ない。どんなに重くなっても、1~2級とは認められないという不合理な状況になっている。 年金を打ち切られた患者たちは「症状が固定した」と判定されていた。だが、その人たちの主治医で眼球使用困難症に詳しい若倉雅登医師は「症状は固定していないし、日常生活にかなりの困難がある患者も多く、判定は不合理だ」と指摘する。 ▽審査は書類のみ、医師が1人で決める
では、判定の仕組みはどうなっているのか。 障害年金を受け取るには、まず主治医に診断書を書いてもらい、他の書類とともに申請する。約160人いる日本年金機構の判定医が審査するのだが、患者を直接診ずに書類だけで判断する。 判定医は障害の種類に応じて担当が大まかに分かれているが、個々の疾患の専門医とは限らない。しかも原則1人で審査するため、どうしても医師の主観や裁量によって判定にばらつきが出る。判定医が「症状が固定した」「障害が軽くなった」などと判断したとしても、なぜそう判断したのか説明はされない。 それに対し、例えば障害福祉サービスを受ける際の「障害支援区分」では、調査員が本人の自宅などに出向き、家族や支援者らとも面談。障害の状態や生活状況を詳しく調べる。その上で、医師や福祉職ら複数人による審査会が合議で支援の必要度(軽い順に区分1~6)を判定する。障害年金の審査はこれに比べると、客観性に欠けるといえる。 ▽厚労省に取材すると、意外な結果に