日本メディアが触れない「フィリップ・モリス」と「東大・京大教授」の癒着告発
タバコ業界との繋がりがあるなら“掲載されなかったはず”の論文
タバコ業界からの資金提供については、さらに厳しい対応をとる組織もある。例えば、前出のBMJ編集部は「タバコ企業からの資金提供に関する方針」を公開し、その中で以下のように記載している。 「BMJ ジャーナルは、タバコ業界との金銭的つながりのないコンテンツを掲載している。タバコ業界が資金提供するコンテンツの除外という原則は、すべてのコンテンツに適用される。これは、私たちのジャーナルがタバコや電子タバコなどの関連製品の害を軽視する目的で業界に利用されることを避けるためである」「BMJ ジャーナルは、タバコ業界によって全額または一部を資金提供された研究を排除する。また、著者がタバコ業界と個人的な金銭的つながりを持つ研究も排除する」 上記の方針に従えば、この京大教授の場合、BMJが出版する媒体に論文が掲載されることはないはずだ。ところが、同教授は2015年以降、11報の論文をBMJが出版する媒体に発表している。うち4つはタバコに関連するものだ。2022年3月には「職場での禁煙政策が、コロナパンデミック中の紙巻タバコの受動喫煙、加熱タバコからのエアロゾル暴露に与える影響(Impact of workplace smoke-free policy on secondhand smoke exposure from cigarettes and exposure to secondhand heated tobacco product aerosol during COVID-19 pandemic in Japan: the JACSIS 2020 study)」という論文を『BMJオープン』誌に発表した。 なぜ、この教授の研究が、『BMJオープン』誌に掲載されたのか。それは、この論文の利益相反の項目にはシミックの名前があるだけで、PMJはなかったからだ。 これは悪質である。医師として絶対にしてはならないのは、患者をだますことだ。タバコ会社から資金をえながら、その関係を隠してタバコに関する論文を発表するなら、医師の職業規範にもとる行為である。そのことが、英国からの発信をきっかけに世界中から非難を浴びた。 私は、京都大学、関連学会、厚労省、そしてメディアの動きをフォローした。ところが、総合情報誌『選択』が8月号で報じただけで、他は沈黙を貫いた。 関係者は、なぜ、議論しなかったのか。世界的たばこ企業のPMIを恐れたのだろうか。このあたり、1999年に公開されたマイケル・マン監督の映画『インサイダー』に詳しい。米国の大手たばこ企業B&W社を告発した元研究担当副社長とテレビプロデューサーの苦境が紹介されている。関係者はPMI・PMJを恐れたのかもしれない。 このような事情を考慮すれば、自らのキャリアをなげうって社会正義を訴えた小沼医師には頭が下がる。権力に迎合せず、国民の立場で行動する姿をみて、私は「医師の鑑(かがみ)」だと思う。11月のシンポジウムでどんな話をしてくれるか、今から楽しみにしている。
上昌広