スローガンは「No Magic」 125代目主将のもと、今年の慶應義塾大は攻める
花園連覇の桐蔭学園で2年からHO
中山が競技を始めたのは小学校3年生の頃だった。父親が高校まで野球をやっていたため野球と悩んだが、体格が大きかったこともあり、接骨院の先生に勧められたのがラグビーだった。神奈川・田園ラグビースクールで体験してみると「初めて行ったらどハマりしました!」。早稲田大のFL粟飯原謙(3年、桐蔭学園)はスクール時代からの幼なじみだ。 後に桐蔭学園高校で、早稲田大主将HO佐藤健次、帝京大学主将FL/LO青木恵斗、立教大学主将SH伊藤光希(いずれも4年)らとともに、「花園」こと全国高校ラグビー大会で連覇を達成することになるが、実は幼稚園から桐蔭学園に通っていた。「よく高校はスポーツ推薦と間違えられますが(苦笑)、ラグビーを始める前からずっと桐蔭です」 中学に入ると学校でもラグビー部に入り、スクールでもたまに競技を続けた。高校ではさすがに1年から試合に出ることはかなわず、2年生から2番、4番、5番、8番などいろんなポジションで徐々に試合に絡むようになった。 そして大きな存在感を見せたのは、高校2年の花園だった。一つ上の正HO平石颯(筑波大学→横浜キヤノンイーグルス)が大会に入ってすぐけがをして、中山は準々決勝から2番を背負い優勝に貢献した。 高校3年時は、HOとしてセットプレー、得意のボールキャリーで存在感を示し連覇に寄与。大会優秀選手の一人に選ばれ、高校日本代表候補にも選出され、AO入試で慶應義塾大学に合格した。
ピッチの内でも外でも先頭に立って走る
最終学年の今季、個人としては、あまり得意ではないというタックルにも磨きをかけており、「ユーティリティーな選手として、セットプレーはもちろん、ボールを持つ回数を増やし、前に出るタックルをし、得意とするジャッカルも決めたい。機動力のある、動くフッカーとして見てほしいですね」。また、高校同期が対抗戦の主将・副将に多いことは、「主将として、チームの象徴として高校同期のみんなと戦えるのはうれしいし、余計に勝ちたいですね」と笑顔を見せた。 高校時代から名が知られた選手で、大学2年時から2番で試合に出続けているHO中山。当然、リーグワンのチームから声がかかっており、「日本代表を目指してみたい気持ちもあります」と話すが、来季以降の将来に関しては、少々悩んでいる。同期でラグビーを続ける予定の選手は他にはおらず、「行きたい業種、会社がある」と同期と一緒に就職活動もしている。 趣味はオフに家族でコースを回るというゴルフ。尊敬している選手は、高校・大学の先輩で今夏日本代表に選ばれた同じポジションのHO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)だ。好きな言葉は「捲土(けんど)重来」。自ら書いた「No Magic」をグラウンドに張り出したように、寮のドアに張って毎日、目にしている。「慶應として100周年で止まっている。個人としても主将としてもチームとしても、日本一に返り咲きたい」 今季、慶應義塾大は例年よりリクルートがうまくいき、37人の1年生が入部した。特に花園で優勝した桐蔭学園の後輩が6人、さらに、日本代表につながるトレーニングスコッド合宿に参加したFB小野澤謙真(静岡聖光学院)といった有望新人も多数加わり、戦力は大きく増した。 節目の今季、ファンにどんなところを見てほしいかと聞くと、「創部125周年を迎えています。100周年で優勝したので、また日本一になれるようにチーム一丸となってやっています。今季は、とにかく攻める慶應、つまりアタックでもディフェンスでも前に出て、慶應らしさを取り戻したい。125周年をキーワードにしていますし、原点に戻って慶應ラグビーを見せていきたい」とまっすぐ前を向いた。 黒黄の2番がピッチ内外で先頭に立って走り続ける先にこそ、ルーツ校の新しい歴史が待っている。
斉藤健仁