「余命はアテにならない」がん専門医に聞いた《余命の誤解》ステージ4は末期がんではない
さらに、今年の5月に放送された『生きとし生けるもの』(テレビ東京系)で渡辺謙演じる肝臓がん患者も余命宣告を受け、そのとおりに世を去っていった。ドラマや映画では「余命3か月=3か月の命」になることが多いのだ。
ステージ4は決して『イコール末期がん』ではない
「実際は余命より長く生きる人も多いのに、ドラマや映画の影響で、余命宣告どおりになると思ってしまう。むやみに寿命を恐れるよりも日々をよりよく過ごすことに気持ちを向けたほうがよいのではないかと思うのです」 現在、余命の告知のしかたについて明確なガイドラインはなく、個々の医師の裁量に任されている。 「実際、ぶっきらぼうに患者に伝えてしまう医師もいますしね。もし不本意な形で余命を知ったとしても、医師の言う余命は中央値というばらつきの大きい範囲内での予測であり、アテにならないと理解しておくことが大事でしょう。特に最近増えている高齢のがん患者の場合、体力の個人差が大きく、余命を予測するのはより難しいです」 余命と同じように、がんの「ステージ4」という言葉も誤解されやすいという。 「ステージ4について問題なのは、『イコール末期がん』ととらえてしまう人が多いこと。しかし実際には、ステージ4でも仕事や家事を続けながら、5年、10年と過ごしている人もいます」 そもそもステージ4とは、一般的に「がんが他の臓器に転移している状態」をいう。しかし、小さな転移が1か所にあっても、10か所以上にあってもステージ4になる。また、ステージ4の定義はがん種によって違う。 つまり、同じステージ4でも、状況は人によって大きく異なるのだ。 「今は次々と新しい治療法が開発されています。治療がうまくいけば、ステージが3や2に下げられる場合もあります。このような誤解についても、ドラマの影響があるように思いますが、ステージ4は決して、『イコール末期がん』ではないのです」 もちろん、がんが見つかったときにはすでに有効な治療法がない、かなり進行したケースもないわけではない。ただ、そういう場合でも大事なのは、あきらめずに少しでも全身状態をよくしておくことが大切だという。 「例えば、食事に気をつけて便秘を予防するとか、運動を続けて筋肉の衰えを防ぐとか。そんな心がけは決して無駄にはなりません。私の経験でも、余命やステージにとらわれずに過ごしている人のほうが、長生きできる人が多いように感じます」