2023年度の「倒産発生率」0.257%、10年間で初めて9地区すべて倒産発生率上昇
【地区別】10年間で初 9地区すべて悪化
地区別では、2014年度以降の10年間で初めて9地区すべて悪化した。 2020年度と2021年度はコロナ禍で経済活動が停滞したが、資金繰り支援策に支えられ倒産は低水準で推移し、2年連続で9地区すべてで倒産発生率が低下した。 2022年度以降、経済活動の再開が本格化した。コロナ関連支援は縮小・終了に向かうなか、円安や物価高、人件費高騰などで、企業倒産は増勢を強めている。 地区別ワーストは、東北の0.307%(前年度0.214%)で、9地区のうち、唯一の0.3%台。以下、近畿0.269%(同0.207%)、関東0.263%(同0.201%)、中国0.258%(同0.169%)、中部0.248%(同0.207%)の順。 2022年度は、倒産発生率が0.200%以上は5地区だったが、2023年度は9地区すべてとなった。
【産業別】2年連続で10産業すべて倒産発生率が悪化
産業別の倒産発生率では、2年連続で10産業すべて悪化した。 産業別ワーストは、運輸業の0.482%(前年度0.361%)で前年度より0.121ポイント悪化した。ドライバーの時間外労働の上限規制など「2024年問題」が迫る前から、ドライバー不足と燃料費の高騰で、3年連続で倒産発生率が上昇した。 次いで、卸売業0.402%(同0.320%)で、この2産業が0.4%台に乗せた。 卸売業は、円安による仕入や人件費などのコストアップに価格転嫁も追い付かず、倒産が増加した。情報通信業は、自治体などの積極的な創業支援を背景に、ソフトウェア業など過小資本の起業が少なくない。業歴が浅いうえ、資産背景もぜい弱なことから、コロナ禍の環境変化に対応できなかったようだ。 このほか、情報通信業0.394%(同0.294%)、建設業0.310%(同0.218%)と続く。 ◇ ◇ ◇ 中小企業はコロナ後の業績二極化が鮮明になっている。ゼロゼロ融資の返済開始に加え、原材料や資材などの価格上昇、賃上げなどのコストアップが企業に重くのしかかっている。 負債1,000万円以上の企業倒産は、2024年4月まで25カ月連続で前年同月を上回り、増勢を一段と強めている。 2023年度の普通法人の倒産は7,529件(前年度比30.8%増)で、2年連続で前年度を上回った。 7,000件台は2015年度の7,332件以来、8年ぶり。2023年度の倒産発生率は0.257%(前年度0.196%)で、コロナ関連支援策で資金繰りが緩和した2021年度(0.167%)を底に、悪化をたどっている。 コロナ禍が落ち着き、金融機関は資金繰り支援から企業の経営再建・事業再生に軸足を移した。ただ、コロナ禍から経済活動が平時に戻り、売上増に伴う資金需要も活発になっているが、企業の過剰債務は解消されていない。このため、新たな資金調達が難しい企業を中心に2024年度の企業倒産は1万件を超える可能性が強まっており、倒産発生率も悪化をたどるとみられる。