チタン製「秋芳洞カード」美祢市に出向のJAL社員奮闘…精巧な加工「3億5千万年前と今をつなぐ直行便」
山口県美祢市の特別天然記念物「秋芳洞」をデザインしたチタン製のカードが評判を呼んでいる。秋芳洞の年間パスポートにもなっているカードを手がけたのは、日本航空(JAL)から市に出向中の今西光孝さん(46)。地元の企業や刑務所を訪ね歩きながら街おこしに奮闘する今西さんは、「温かく迎えてくれた『第二の故郷』に恩返ししたい」と話す。(谷口善祐) 【写真】国内有数の鍾乳洞として知られる秋芳洞
限定100枚にシリアルナンバー
カードは財布に入る縦5・4センチ、横8・5センチサイズで、航空機のエンジン部品などと同じチタン製。秋芳洞の図柄には地元出身の切り絵作家・久保修さんの作品「ふるさとの春」を用い、満開の桜や鍾乳洞の岩肌などが細部まで浮き上がって見える精巧な加工が自慢だ。
裏面には山口宇部(山口)―羽田(東京)路線を飛ぶJALの旅客機が描かれている。1枚2万7500円と安くはないが、入場料1回1300円(大人)の秋芳洞に何度でも入ることができるほか、限定の100枚にシリアルナンバーを刻印した希少性も人気という。昨年12月の発売以降、すでに30枚ほどが売れている。
JALで旅行会社への営業などを担当していた今西さんに転機が訪れたのは2021年。総務省の「地域活性化起業人制度」を活用し、JALと協力関係にあった美祢市の助っ人として白羽の矢が立った。ただ、市観光振興課(現観光政策課)に配属されたものの、それまで山口と縁がなかった今西さんは「突然来た『よそ者』を地域が受け入れてくれるか、不安は大きかった」と振り返る。地元で暮らし、街の姿を探る中で着目したのが、山口を代表する観光名所・秋芳洞の活性化と市の財源確保だ。
市によると、秋芳洞の年間入場者数はコロナ禍で約22万人に半減した。回復基調にはあるが、昨年度は約39万人と以前の水準までは戻っていないという。総務省が公表した昨年度の県内19市町のふるさと納税額は計約44億円。このうち、美祢市はわずか7800万円ほどで、全体の2%弱にとどまっていた。