チタン製「秋芳洞カード」美祢市に出向のJAL社員奮闘…精巧な加工「3億5千万年前と今をつなぐ直行便」
「受刑者の社会参加意識や自己肯定感を向上」と感謝
地域の資源を生かして街おこしを図る「ものづくりプロジェクト」の中心役を担うことになった今西さんがこだわったのが、「美祢らしさ」だ。JALの整備工場に地元の金属加工会社の関係者らを招いた。旅客機の柄を彫ったチタン製カードをJALが販売していることを整備士から教わり、「片面に機体、片面に美祢の風景を描こう」とひらめいた。加工会社側も協力を快諾してくれた。
「受刑者の社会復帰にも役立つ」と考え、市内の刑務所で受刑者への教育や職業訓練を担う「美祢社会復帰促進センター」との協業も実現させた。センターで働く「出向仲間」の法務省職員とのつながりが生きた。
今西さんが昨秋、市をPRする広告やポスターづくりを受刑者らに考えてもらう職業訓練の場で講話すると、約150ものキャッチコピーが集まった。
選んだのは、秋芳洞の長い歴史とJAL便の特徴を表現した「3億5千万年前と今をつなぐ直行便」。カードをPRするポスターに大きく使われ、同省成人矯正課の森田裕一郎課長は「地域の課題解決に貢献する体験となり、受刑者の社会参加意識や自己肯定感を向上させた」と感謝する。
カードは市観光協会(0837・62・0115)で販売し、JALのふるさと納税サイトでも注文できる。「自然や観光資源が豊かで人々も温かい美祢市と法務省、JALが手を携えたことで、すばらしいグッズができた」と喜ぶ今西さん。その貢献ぶりに、市観光商工部の河村充展部長(57)も「市に縁のない人ならではの視点や、民間のネットワークを使って事業を実現する行動力に感心している」と目を細めている。
鹿児島県南さつま市は「007は二度死ぬ」ロケ地飛行
地域活性化起業人制度は、国が給与の一部を負担し、民間人材に地方自治体で地域の課題解決に取り組んでもらう仕組み。JTBやソフトバンク、JR西日本などの大手企業を含め、2023年度には約800人が参加した。JALでもこの制度などを活用した社員が各地で活躍している。
世界的な人気スパイ映画シリーズ「007は二度死ぬ」(1967年公開)のロケが行われた鹿児島県南さつま市では一昨年、ロケ地の上空を飛ぶ遊覧飛行が企画された。現地の散策も盛り込んだ1泊2日のツアーは、受け付けから10日ほどで定員が埋まったという。
外国籍の住民が増えている東京都江戸川区では、客室乗務員がごみ捨てのルールなどを紹介する「くらしの便利帳」の外国語版がないことに気づいた。日本のマナーや習慣を伝える4か国語版のガイドブック2万部を発行し、話題となった。