【下山進=2050年のメディア第42回】渡邉恒雄死す 後継者山口寿一の原点とは? 読売新聞はどうなるのか?
渡邉恒雄氏が、亡くなりました。 読売新聞は、電子版単体の販売をしていない唯一の全国紙です。 その理由に、販売の神様務台光雄・渡邉恒雄とつないでいくなかで、専売制の販売店というイノベーションをつかって1994年には部数1000万部を突破したという成功体験があります。 この1000万部体制を死守せよと渡邉恒雄は繰り返し社内で発言をしてきましたが、2011年上半期のABC部数で、初めて1000万部を割り込み、最新の2024年上半期のABC部数では、595万部にまで落ちこんでいます。 読売新聞のネット観というのは独特です。 渡邉が以下のような発言を社内で続けたことで、読売は、ネットを歓迎すべき技術革新として抱擁するのではなく、常に対峙して見るものとしてきました。 「携帯電話とかインターネットでいろいろ情報が発信されていて新聞を上回る媒体力を持つという説がありますが、携帯やネットで発信されている、あるいは受信されている情報は国を正しい方に動かすことにはほとんど役立ちません」(2008年1月7日 読売新聞グループ本社 東京本社の賀詞交換会で) 「私は、新聞も本も読まず、ネットの世界にのみ没入している若者は、将来日本を支える指導力、知性、生産力、倫理観等を身につけることが出来ず、国民の文化や民度の劣化を 招くものと心配しています」(2010年4月1日 東京本社入社式) 「電子メディアはこれからも発展していくでしょうが、あの中で体系的で理論的な、将来を見据えた主張が出てくるわけがありません。ブログやツイッターは、すべて断片的な、瞬間的なものであって、ある面で危険性をはらむものです」(2012年4月2日 東京本社入社式) 「映像やネットだけで、人間の知性は磨かれるものではない。日本人の民度を下げたくなければ、活字文化のシンボルである新聞文化を絶対に守っていかねばならん」(2018年4月2日 東京本社入社式) ネットは、新聞の崇高な国家的使命を汚す敵として、常に、渡邉のスピーチの中に現れていたのです。 渡邉が信頼をしていたのは、あくまで紙の新聞であり、それを支えた専売店によるネットワークでした。