半導体業界のダイバーシティ セミコンジャパンでパネルディスカッション
さまざまな業種業態でダイバーシティが浸透する中、半導体業界でも女性の活躍を後押しする動きが見られる。これまで圧倒的に男性比率が高かった半導体エンジニアにおいても女性エンジニアが少しずつ増えつつある。今月13日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「セミコンジャパン2024」では、「Women in Business The First」と題する講演およびパネルディスカッションが行われた。女性の社会進出やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の取り組みについてアーティストのスプツニ子!氏が講演するとともに、「持続可能な成長へ」と題し、半導体業界で活躍するパネリストたちがパネルディスカッションを行った。 DE&Iは従来企業が取り組んできた多様性の促進に公平性という考えを加えた概念。スプツニ子!氏は、企業のDE&Iを推進するために従業員向けのセミナーやヘルスケアサポートなどを提供しているCradleの代表取締役社長を務める。スプツニ子!氏は、構造的な差別の存在を繰り返し訴えた。構造的な差別とは、当人たちにそのつもりがなくても社会や企業の構造によって特定の性別や人種にとって不利な状況が生まれることを指す。無意識下で刷り込まれていることが多いため、認識されづらいという性質がある。 この構造的な差別をなくすためには、仕組みをデザインする側である管理職に多様性が求められる。多様な考え方を持った人が集まることで、さまざまなバックグラウンドを抱える人たちを考慮した仕組みを作ることができる。スプツニ子!氏は「誰にでも平等な支援をするのではなく、それぞれの立場や属性に応じた支援をしていくことで構造の偏りをなくし公平な状態をつくることができる」と語った。 続いて行われたパネルディスカッションでは、スプツニ子!氏に加えて、ソニーセミコンダクタソリューションズで代表取締役社長兼CEOを務める清水照士氏、住友商事・常務執行役員サステナビリティ・DE&I推進グループ長の江田麻季子氏、モデレーターとして、Trinity Indo-Pacific PartnersのCo-Founder&Partner浅井英里子氏が登壇。「持続可能な成長へ」をテーマに、いかにDE&Iを推進するか、女性が社会でリーダーシップを発揮するにはどのような支援が必要かについてパネルディスカッションが行われた。 清水氏は①女性理系人材の母集団の少なさ②半導体業界に対するイメージ③入社後のキャリア形成やライフステージの変化におけるリテンション④低い女性管理職割合および管理職希望者、少ないロールモデル――の課題があると指摘。奨学金や大学での講演の取り組みなど、これらを解消するために自社で実施している取り組みを紹介した。 江田氏は「共働きが一般的になり、人材不足と人材流動性が高まる中で経営戦略としてダイバーシティの重要性が高まっている。企業における多様性が重要であるという理解は高まり制度は整ってきたが、運営面ではまだまだ不十分。少数派を順応させるより、大多数を変革して、誰もが素の自分で活躍できるように社会構造を変えていくことが大切」と訴えた。 女性の活躍支援の在り方について清水氏は「介護や男性の子育て、グローバル多様化についてさまざまな話がある。誰がどんな支援を求めているかを把握することが大事」とし、「将来お子さんを持つ可能性のある女性たちに、説得力を持って話ができる人と交流する機会を設けるべき。採用のプログラムを通じて企業として半導体業界に女性はウェルカムであると伝えたい」と語った。 スプツニ子!氏は「健康の話も大事。企業が女性の不妊治療や月経痛を和らげるのを支援しているケースもある。これらはタブー視されている時間が長かった問題だが、自分ではなかなか知り得ない情報なので、こういった情報提供も大事だと考えている」と話した。江田氏は「半導体産業はこれまでもこれからも世界の成長を支える産業。いろいろな人に興味を持って働いてほしい」と半導体業界の魅力を語った。