元保育士の「闇バイト強盗」が深夜に侵入…被害者の戦慄告白「身の毛のよだつ体験」と「不幸中の幸い」
植え付けられた「恐怖」
「今でもあの夜のことを思い出すと身震いするというか、怖かったなというのがあります。ただ、犯人がね、『やりたくない』「嫌だ』と思いながら犯行に及んでいて、私が『誰だ?』って言ったら、『見つかった』とか言いながら逃げていった。逆上してこちらに向かってくるような人間じゃなくてよかったな、とは思っています」 ひどすぎる…! 闇バイト強盗に「見るも無残」に荒らされた家屋 ’24年12月26日、千葉地裁松戸支部で闇バイトに応募して、鎌ヶ谷市内の住宅に窓ガラスを割って侵入して住居侵入の罪に問われている元保育士・前田祐一郎被告(25)の判決公判が開かれた。 冒頭は判決公判に際して被害者の50代の男性AさんがFRIDAYデジタルに語った、偽らざる気持ちである。 事件が起きたのは’24年10月14日未明。事件直後、Aさんはこう話していた。 「自宅2階で寝ていたら、階下で『ドン』とものすごい音がした。様子を見に行こうとすると、今後は窓ガラスが叩き割られる音がしました。私は子供が遊びに使っていた木の棒を手に取り、床をドンドン叩きながら『誰かいるのか!』と大声を出しつつ階段を下りました。すると、階下で『見つかった!』という叫び声がしました。 ガチャンとまたガラスが割れる音がしました。犯人は窓を割って逃げ出したのでしょう。ガラスの破片で切ったのか、1階の廊下には血がボタボタと落ちており、それが同居する高齢の母親の部屋の前まで続いていました。もし部屋に入られていたらと思うと、ゾッとします」 盗まれたものがなかったのが、不幸中の幸いだった。その後、事件は急展開を見せた。 「前田被告は当日14日の夕方に船橋駅前の交番に自首しました。千葉県警は10月22日に、同じく住居侵入の疑いで30代の男性会社員を逮捕。ただ、こちらは不起訴になっています。この会社員は運転手役として車で待機していたところ、指示役から『お前も行け』と言われて住宅に向かったといいます。しかし、前田被告の『見つかった』という声を聞いて、いっしょに逃げており、住宅には侵入していませんでした。 前田被告は2年ほど前に詐欺に遭い、消費者金融で多額の借金を抱えていたそうです。返済に困っていた彼は、X(旧Twitter)で高収入のバイトを見つけ、通信アプリ『シグナル』で指示役と連絡を取りました」(全国紙社会部記者) 12月17日に開かれた初公判で、前田被告は事件当時の様子をこう話している。 「“会社の金を持ち逃げした人と話し合ってお金を取り戻す仕事”だと聞いていました。いま思うと不自然ですが、当時はお金がなくて心に隙が生まれていました。 事件当日、携帯電話につないだイヤホン越しに『窓ガラスを割れ』と言われました。手で叩いてもガラスが割れず、何度も『無理です』と言いました。しかし、『いいから、やれよ』『ぐずぐずしていると殺すぞ』などと脅されたため、恐怖でやめることができませんでした」 ◆「大変後悔」としたためて… コンクリートブロックを投げつけて窓ガラスを割り、住宅に侵入。しかしAさんに見つかったため、前田被告は何も取らずに運転手役の男性と逃走した。 検察官は懲役8ヵ月を求刑。弁護人は執行猶予付きの判決を求めた。 12月26日、古谷慎吾裁判官は、「犯罪行為だとわかっていながら実行したことは厳しく非難されるべきだ」と指摘した上で、「自ら警察に出頭して捜査に協力した」と懲役8ヵ月、執行猶予3年を言い渡した。 判決を知らせるとAさんは「執行猶予が付いたんですね」とホッとしたような表情を見せ、「逮捕された二人から手紙が来た」と明かした。 「不起訴になった会社員の男性からの手紙は『自分の祖母も足腰が弱くて、もし、強盗に遭うような怖い目にあったら、私はどう思うだろう。大変後悔しています』というような内容でした。 前田被告からは本人とご両親から手紙が届きました。ご両親からの手紙は真面目な人柄がうかがえるもので、『責任を持って(被告人を)更生させます』と書いてありました。前田被告の手紙には、お詫びの言葉と一緒に、『脅されて、とにかく怖かった』というようなことが書いてありました。本当に怖かったようで、それを読むと少しかわいそうにも思っていたんです」 しかし、あと少し侵入に気づくのが遅かったら、前田被告はAさんの母親を襲っていたかもしれない――そう告げると、Aさんはこう否定した。 「手紙を読んだ感じでは、他人に手を出せる感じではなかった。私が勝手に思っているだけかもしれませんが、実際に相対したら、パニックになって逃げちゃったんじゃないかと感じています。私の母も、自宅に侵入されたことはショックだけども、『犯人が他人に手を上げることができないような人だったことは不幸中の幸いだった』と話しています。前田被告は、せっかく社会のなかで更生するきっかけを得たのだから、両親のもとで立ち直ってほしいと思っています」 上下、黒のスーツに白いシャツで出廷した前田被告は、古谷裁判官が判決の理由を述べる間、何度もうなずきながら聞いていた。 「ちゃんと立ち直ってほしい」。Aさんの気持ちに前田被告は人生を懸けて応えねばならない。 取材・文:中平良
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