私立小中学校の授業料補助、本当に格差の是正につながるのか?
私立小中学校の本音「公立一貫校と比較して不公平」
「不公平じゃないですか」。日本私立中学高等学校連合の福島康志事務局長は語気を強めた。同連合は2015年度予算編成時から私立中学校生徒への公的支援制度の創設を文科省に訴えてきた。今年度で3年目になるという。「私立も義務教育の一端を担ってきた。それなのにこれまで何の支援もされてこなかったんです」と訴える。 特に訴えるのが「公立中高一貫校」との格差だ。今年4月に出された要望書には以下のように書かれている。 「平成11年度からは私立中高での成果を踏まえて中高一貫教育制度が学校教育法上の制度となり、公立中高一貫校が各地に設置された。これらは憲法上授業料無償とされる地元の公立中と異なるにも関わらず授業料が無償とされている」 「保護者や子どもたちにとって国公立と並ぶ選択肢として実質的に機能するよう私立中学校生徒に対する授業料負担の軽減等を要望します」 福島事務局長は「公立中高一貫校は入学選抜だってやっているし、受験している層からしたら授業料が安い方に惹かれるのは当たり前でしょう。公立が全面支援されている。私立に補助をするのでなければ公立の一貫校でも授業料を取るべきではないですか」と話す。 公立中高一貫校が増えたため、以前なら私立を受験していた子供が公立の一貫校を志望するケースが増えていることが今回の要望につながっているようだ。今回の施策には「民業圧迫」の状況を是正する狙いがあるのかもしれない。
「中途半端な制度」中学受験を経験した保護者は懐疑的
都内の私立中学に通う長女(13)と中学受験を予定し、塾に通っている次女(9)を持つ母親Aさん(50)は、「中学受験をする際に必要になるのは授業料だけではない。4年生から3年間通う塾代は小学校4年生で月に2~3万円、6年生になれば6~7万円かかる。今回の制度ができたからと言って私立を選択できる家庭が増えるとは思えない」と話す。塾に通わせられるかで、私立中受験者は絞り込まれるため、授業料だけの問題ではないのだ。 Aさんは「塾に通わなくても受かる、あるいは塾に特待生として通えるような優秀なお子さんは公立中へ行ったとしてもトップクラスで通用するはず。しかも現実にはほとんどいないのが現状です。今回の制度は中途半端ではないか。中間層がしっかりと私立を選択できるようになる仕組みではない」と首をかしげる。 また、経済的に厳しい家庭が目指しやすい、公立中高一貫校についても現状に疑問を投げかける。「高所得世帯が殺到している。公立中高一貫校の受験は特殊なので、公立中高一貫校用の勉強をし、落ちた時のために私立中用の勉強もしている。塾プラス家庭教師をつけたり、通信教育をしたりして思い切り教育費をかけた子が公立中高一貫を目指してくる」と説明する。