あふれる郡山愛 福島県出身の西田敏行さん古里題材の歌詞残す 30年前 方言で思い切々と
「♪おまえは故郷(ふるさと) おまえは福島」「♪愛する郡山」―。10月に死去した福島県郡山市出身の俳優西田敏行さんが地元への思いを込めて作った歌詞「やばんしょ故郷(ふるさと)」が、市内で見つかった。親交のあった同郷のギター詩人・故高野太郎さん=享年(60)=が歌う曲が収録されたCDがあることが分かった。30年ほど前に高野さんの音楽事務所がリリースしたが、今ではその存在はほとんど知られていない。関係者は作品をPRし、西田さんが古里に注いだ愛情を受け継いでいく。 都会の暮らしで心がすり減った福島県出身者が、望郷の念を募らせる様子が切々と描かれている。西田さんの心情を投影したとみられる。 歌詞には満たされない気持ちを表したのか、「やぶけたこころ」「はみ出た道」などのフレーズが登場。それに対し、「おいでおいでと手で招く」「やさしくほゝ笑んで」と、故郷が心身を癒やすよりどころのように寄り添ってくれる存在であることが表現されている。
曲の最後は「やばんしょ故郷」「やばんしょ福島」「やばんしょ郡山」と連呼して締めくくる。やばんしょとは方言で「一緒に行きましょう」の意味。生まれ育った地へと駆り立てられる衝動が伝わってくる。 1995(平成7)年、郡山市で高野さんの演奏会開催が決まったのが、「やばんしょ故郷」が誕生したきっかけに。西田さんが「郡山で演奏するなら古里の曲を作ろう」と提案し、演奏会でお披露目された。楽曲はCD「高野太郎ライブ‘99Vol.2」に収められ、各地の演奏会場などで販売したとみられる。 西田さんの所属事務所によると、西田さんが古里を題材に作詞したのは珍しいという。 ■福島県民の心に響いてほしい 高野さん弟 太郎さんの弟・和次郎さん(78)=郡山市在住=が自宅でCD約30枚と譜面を見つけた。西田さんの訃報に接し、兄が歌った「やばんしょ故郷」を思い出して探した。 太郎さんは2001年、病気で亡くなった。「この曲を埋もれさせてはいけない」。地元の公共施設に寄贈する意思を示し、市民らが気軽に曲を聞ける環境を整えたい考えだ。
生前、西田さんと言葉を交わした和次郎さんは「西田さんにとって福島は懐かしく、美しく思える場所だったのではないか」と思いをはせる。西田さんの言葉が県民の心に響いてほしいと願う。 ◇ ◇ 「都会にいながら、ずっと郡山に思いを寄せていたのが伝わる」。西田さんと小中学校の同級生で、郡山市のアイワ不動産社長の村上賢一さん(77)は曲の存在を初めて知った。歌詞を読み「胸がいっぱいになる。他の同級生にもこの曲を聞かせてやりたい」としみじみと語った。