「ごみの多さに気づいてほしい」藤前干潟の清掃活動がもたらす、ごみ拾いの意識改革 伊勢湾流出を止める
「“蛇口の元”を閉めないと、解決にはならない」
そんな野村さんは普段、藤前干潟に飛来する渡り鳥が見られる「名古屋市野鳥観察館」で働いています。「渡り鳥がたくさん来る場所なので自然を守りたい」という思いもあるそう。大好きな渡り鳥を守りたい一方、活動にはいくつか課題があるといいます。 藤前干潟クリーン大作戦実行委員会事務局 野村朋子さん: 「これだけ清掃活動をしていても、ごみが流れ続けています。本当は私たち家庭ごみを出す消費者や産業廃棄物を出す企業といった“蛇口の元”を閉めないと、解決にはならないんです。その部分を抑制する活動にシフトしていきたい気持ちがあります。でも、蛇口を閉めてしまったら、皆さんの便利な生活を狭める働きかけになってしまって…具体的なアクションは難しいですね」 ほかにも、清掃活動イベント自体が年々大きくなる中で、運営メンバーが高齢化していることも課題だと話していました。さらに野村さんは「藤前干潟より先の海にごみを流したくない。たとえ小さな規模でも、続けていきたいです」と意気込みます。
伊勢湾の海洋ごみ問題最後の砦「藤前干潟」
そうしたプラスチックごみによる海洋汚染「海洋ごみ問題」は、世界的な課題としてさまざまな国が対策に乗り出しています。愛知県沿岸の伊勢湾でも、流木などの自然ごみや人口ごみが川から海へ流れ出て、伊勢湾の沿岸に漂流。海に大きな影響を与えています。 藤前干潟で調査に参加した四日市大学環境情報学部の千葉賢教授は、藤前干潟周辺の清掃活動がもたらす役割について「海に出る前の防波堤」だと話します。 ―――藤前干潟での調査や清掃活動が果たす役割は、どのようなものですか。 「庄内川の河口は葦が生えているので、植物が生えているとそこにごみが引っかかります。そうやって干潟はごみの防波堤になっているんです。藤前干潟クリーン大作戦でごみをある程度収集して分析することで、伊勢湾に出るごみを減らせる可能性が高くなる。非常に価値のある活動だと思います」
全11会場を合わせると1987人が参加した「'24秋の藤前干潟クリーン大作戦」。ごみ拾いをするために岐阜から来た中学生や、ボランティアとして大学生から参加し続けてきた青年、企業の慈善活動として参加した人など参加理由はさまざまでしたが、思いは1つ。「護岸を少しでもキレイにして海洋ごみ削減につなげること」です。 より多くの人に清掃イベントに参加してもらい、現状を目の当たりにしてもらうことで、ごみ拾いへの意識が高まっていくのではないでしょうか。
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