前代未聞の「非常戒厳」宣言から1週間 ほとんど「無政府状態」と言える韓国で起きていること
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は12月3日に非常戒厳を宣言し、韓国を大混乱に陥れた。 韓国で「戒厳軍」兵士のライフル銃をつかみ立ち向かった女性が胸中を語る 4日未明には国会議長による緊急会議の召集に応え、与野党の議員190人が議事堂に入り込んだ。彼らが満場一致で賛成したことにより、非常戒厳の解除を要求する決議案が可決。同日午前4時半、尹大統領は非常戒厳を解除すると発表した。 非常戒厳が発布されるという前代未聞の事態が起きてからおよそ1週間、韓国はまだ混乱の最中にある。
弾劾訴追案を再び提案する見通し
野党議員らは4日、尹大統領の罷免を求める弾劾訴追案を提出した。7日に国会で採決が進められたものの、与党「国民の力」の議員が3人を除いて投票をボイコットしたため、投票議員が定足数に達さず不成立となった。 弾劾訴追案は、賛成が在籍議員300人のうち3分の2(200人)以上の賛成で可決する。賛成票を投じたのは195人で、5人足りず否決となった。 なお、野党側は弾劾訴追案を再び提案すると10日に発表した。弾劾訴追案を12日に再び提案し、14日に採決するとしている。
韓国は実質「無政府状態」
米紙「ニューヨーク・タイムズ」によれば、「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は「自らを政府の意思決定者とし、大統領はもはや国を運営していないと述べた」という。これに対し、野党は「権力の行き過ぎだ」と非難した。 韓国の憲法では、辞任するか弾劾されない限り、大統領を交代させることができない。ソウル大学校で政治学を専門とするカン・ウォンテク教授はニューヨーク・タイムズに対し「大統領は決断もできず、指針も出せず、命令も出せない状況だ」と語っている。「大統領はいるが、無政府状態だ」
ことごとく捜査対象になるリーダーたち
韓国最高検の捜査本部は8日、尹大統領を内乱と職権乱用の容疑で捜査していると明らかにし、9日には彼の海外渡航が禁止された。 また、元国防相の金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相が8日に身柄を拘束されている。彼は大統領に「非常戒厳」を進言したとされ、検察は内乱の疑いなどで逮捕状を請求した。 韓国メディア「聯合ニュース」によれば、警察庁国家捜査本部はまた、本来なら現在の混乱状態をおさめるべき立場にある韓悳洙(ハン・ドクス)首相の出頭を10日に要請した。それに加え、非常戒厳宣言の前後に開かれた閣議に出席した「閣僚、情報機関・国家情報院の趙太庸(チョ・テヨン)院長ら」も加えた計11人に出頭を要請しているという。
COURRiER Japon