ただの「継承」に留まるな 行政学者が菅首相に寄せる期待
新たな「国のかたち」をつくる!
いま東京圏で地方移住への関心が高い。コロナ禍の影響もあるが、それだけではない。多くの会社員が在宅勤務やテレワークを経験し、ゆとりある暮らし、新しい働き方への意識変化が強まっている。内閣府の調査では東京圏で約4割、30~40代が強い関心を示している。いまこそ、中央集権体制と東京一極集中の国づくりを解体し、分散分権型の国に変えるチャンスだ。 わが国は半世紀以上、工場等の地方分散を狙い、職住近接の地域づくりを目指し全国総合開発計画(1~5次)などを進めてきた。だが、そうはならなかった。ただ幸いなことにその間、新幹線や高速道、空港など3大高速交通網が整備され動き易くなった。ところが今のままだと集権体制の温存でストロー効果が働き、その果実は東京に一極集中し、地方は疲弊するだけの状態だ。ふるさと納税の発想は良いが、それだけでは根本解決にはならない。 いま必要なのは大振りの改革に挑むことだ。分権改革を進め地方主権体制を目指す、広域圏を州とし内政の拠点にする、既にある3大高速網の移動コストを公共管理で引き下げ、人の動きを一層流動化する。 日本は米カリフォルニア州1州ほどの小さな国。だが3大高速網がよく整備され端から端までの移動にそう時間は掛からなくなった。だが、カネ(費用)が掛かる。これがバリアとなり東京圏から企業も人も出ない。ここを直すと良い。これは時間を掛けずにやれる。 新幹線、高速道、航空機の運賃を国や都の負担で実質上タダにするのだ。そうすると、人も企業も事務所も広範囲に動き出す。これまで力を注いできた道路づくりの時代は終わった。造るより利用を工夫すべきだ。ガソリン税を、道路利用者がタダで動けるように使ったらどうか。毎年の地方創生費5兆円もそこへ投入、東京の再開発予算から数兆円を回すことも選択肢かも知れない。 総力戦で東京一極集中の解消を狙う。すると、本社は東京でも新幹線沿い、高速道沿い、地方空港沿いに様々な支店、サテライトオフィスが集積し人も企業も動く。水は低きに流れる。立地コストが安く環境が良ければそこが集積地になる。東京圏は150キロ圏の仙台、名古屋まで、大阪圏も同様に名古屋、広島まで広がる。大都市圏から地方都市、農山村に移り住む若い人も増える。そうすれば、子どもがもっと生まれよう。地方のオフィスと都会の自宅を往来する2拠点生活者も出てこよう。こうして地方分散が進み、日本は元気を取り戻す。 与野党の対立、自民党内の利害が錯綜する大改革だが、地方への権限・税財源の移譲、州制度への移行を睨み「第3臨調」を設置したらどうか。いまこそ新たな国のかたちを創るべきだ。