ITプロジェクトの資金を確保するには--テクノロジーの利点を伝える5つのコツ
3. 人々が望むものを与える MAG Airports GroupのCIOを務めるNick Woods氏は、プロジェクトをITリーダーシップチームに売り込むことの重要性を説明した先頃のトレーニングセッションについて語った。そこでの同氏の主なメッセージは、単純明快なものだったという。 「相手にどんなメリットがあるのかを示す必要がある」とWoods氏は米ZDNETに語った。「コミュニケーションを成功させるには、対象のユーザーグループにとって重要な事柄について話さなければならない。マネージングディレクターのモチベーションは、サービスを使用する現場の人間のモチベーションとは異なる」 Woods氏は、MAGのデジタルトランスフォーメーションプログラムの一環として新しい勤務表システムを導入した事例を挙げた。 「スタッフがシフトを入れる方法や、シフトの交代を申請して休暇を予約する方法をデジタル化した。以前は紙ベースで行われることが多かったプロセスだ」。これによりMAGは、運用の最適化、労働慣行の改善、リソース割り当ての改善という利点を得られる。 しかし、これらの利点は、紙ベースのプロセスに慣れたスタッフには必ずしも響かなかった。そこでWoods氏は、ビジネスの価値ではなく個人にとっての利点に焦点を当てた。 「スタッフにとってのメリットとは、勤務表が予測しやすくなる、シフトの交代がしやすくなる、休暇の予約や確認がしやすくなる、スケジュールの管理が簡単になることだ」と同氏は語る。「これこそスタッフが望んでいたことだ。そして、彼らがテクノロジーから得るものだ」 4. 視覚的なアプローチをとる 英国気象庁(Met Office)でプロダクトイノベーションを統括するNiall Robinson氏も、利害関係者にはそれぞれ個別の要件があり、コミュニケーション能力に優れた人はそれらのニーズに対応しているという認識のビジネスリーダーだ。 Robinson氏によると、一番のコツは概念実証を作成することであり、「百聞は一見にしかず」だという。同氏は米ZDNETに対し、そのような視覚的なアプローチの成功率によく驚かされる、と語った。その例として同氏が挙げたのが、「Snowflake」テクノロジーへの投資の潜在的な利点を利害関係者に示すために使った動画だ。 「私が『シズルリール』(メリットを紹介する短い動画)と呼ぶものを作ってもらった」とRobinson氏は語る。「動画を使えば、テクノロジーの利点を60秒足らずで紹介できる」。このアプローチが功を奏して、Robinson氏は2024年にプロジェクトの資金を獲得できた。英国気象庁は現在、「Snowflake Marketplace」を使用してプラットフォームや製品を提供している。 Robinson氏は、視覚的なアプローチによって複雑なテクノロジーを伝えやすくなるという点を、他のビジネスリーダーに参考にしてほしいと述べた。 「時間を見つけて短い動画を見てもらえるはずだ。それで、何が起きているのかをある程度把握できる」と同氏は語る。 「利害関係者に対し、実際に何が可能なのかをある程度理解させ、言葉で説明するのではなく、目に見えるものを示すことが重要だ。このアプローチは、私のキャリアを通して有効だった」 5. 夢を実現する 保険会社Hastings DirectでCIOを務めるSasha Jory氏は、自信を持ってIT部門の外へ出て、他の事業部門と相手側の条件で対話する能力が求められる、と述べた。「技術者がストーリーの草稿を作って、素晴らしいビジョンを語ることができても、その夢を人々のために実現できないのなら意味がない」(Jory氏) IT担当者には、変革の推進者として高い能力が求められると同時に、他部門の人がデジタルトランスフォーメーションの取り組みに参加できるように、分かりやすい言葉で話す能力も必要だという。 Jory氏は、テクノロジーの利点を伝えようとしている人々に、理解しやすい小さな絵を描くように薦めた。「技術者がITシステムやサービスにどれほど興奮していようと、全てのテクノロジーが組織に適しているわけではない、ということを受け入れなければならない」とJory氏。 「『優れたアプリケーションと便利なハードウェアがある』と言うのは素晴らしいことだが、複雑さは悪だ。したがって、シンプルさと分かりやすさに焦点を当てて、ストーリーを伝え、ビジネスの課題の解決に適したテクノロジーを使用して、後はひたすら成果を出していく」 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。