〈ディズニーを抜いて世界3位に〉「人気アニメとのコラボ」だけではない…USJが人気急増となった「3つの転換点」
ハリウッド映画から日本の人気アニメへのシフトチェンジ
また、来場動機に繋げるためには子どもからの人気だけではなく、親世代からの支持を得ることも非常に重要だと中島氏は語る。 「USJは2022年に『美少女戦士セーラームーン』とのコラボを実施し、大成功を収めました。アニメ放送時に小中学生だった30代~40代の女性をターゲットに、親世代となったこの層を取り入れ、家族での来場動機に繋げたんです。 例えば、子どもは『スーパーニンテンドーワールド』、母親は『美少女戦士セーラームーン』、父親は『ハリーポッター』というように、それぞれに“目当て”となるコンテンツを用意し、家族全員が楽しめるような工夫が施されています」 そもそもUSJは開業当初、『ジョーズ』や『ジュラシックパーク』などの映画のテーマパークというコンセプトだったが、なぜフレキシブルに人気の漫画・アニメコンテンツを取り入れることができているのだろうか。 「『ハロウィン・ホラー・ナイト』の仕掛け人でありイベントプロデューサー(当時)の津野庄一郎さんによると、2010年代からUSJの来客数はアメリカの本家ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドやフロリダを上回り、現在ではUSJ単体での独自コンテンツを展開しやすくなったという背景があるそうです。 コラボの自由度が高まったのは、2015年当時大人気だった『進撃の巨人』とのコラボが成功したことが大きく影響しています。 このようなコラボは、出版社や漫画家などのコンテンツホルダーにとっても二次利用による利益と話題性が得られるため、双方にとってメリットの大きいプロジェクトなんです」
エンタメをYouTubeで吸収する現代の小学生
小学生のUSJ人気増加の背景には、人気コンテンツとのコラボだけではない。 東京ディズニーリゾートが収益化を狙ったYouTube動画を制限するようになったことも関係しているという。 「USJの公式サイトにもパーク内での『著作権侵害につながる、営利目的の撮影』や『LIVE(生)配信やそれに準じた撮影』に制限を設けていると記載がありますが、このような制限項目をしっかりと守って撮影しているのであればYouTuberの動画は問題ないと見られます。 一方で東京ディズニーリゾート公式サイトでは、利用約款の禁止行為の項目に『商業目的の撮影』と記載があり、これが収益化しているYouTuberの動画コンテンツにも当てはまると示唆されているんです。 現代の子どもたちはYouTubeでエンターテイメント情報を得ることが多く、YouTuberも人気職業の1つです。東京ディズニーリゾートでの動画企画が制限されたため、YouTuberのテーマパークの動画企画がUSJに流れるようになったものと考えられます。それを見た小学生たちがUSJに惹かれるようになったことも、人気を集める要因のひとつでしょう。 また、USJには特定のハッシュタグを付けた投稿に応じてランクが上がるファンクラブ『USJファン』があります。これは、ステマ問題でインフルエンサーの案件が難しくなったため、ファンクラブに入会している公証のファンがSNSで投稿することで、情報の信頼性を高める仕組みと見られていて、情報拡散や広告を目的とした手段だと考えられます」 USJはディズニーとは違い商業目的の動画制限を設けないことで、SNSを宣伝手段としてうまく活用しようとしているようだが、一昨年話題となった『下着ユニバ炎上』のような、モラルに反した投稿がさらに出てくるかもしれないという懸念点もありそうだが……。 「『下着ユニバの炎上』では、来場者がパーク内で着替え、スタッフに気付かれずに撮影してSNSに投稿したことが問題となりました。 入園時点であのような格好でない限り、強制退去させることは難しいようです。 今後、こうした事例が続けば、USJも対策や罰則を導入するかもしれませんが、これは投稿者のモラルの問題。 今回のような、USJ側に非がない炎上がメディアに取り上げられることは、USJ側にとってはメリットとも捉えられ、注目度が上がる側面もあるでしょう」 来場者の自由を規制しすぎず、子どもたちにいい体験を与える大らかなテーマパークのUSJ。今後も我々が予想だにしない仕掛けで楽しませてくれて、世界1位の座を射止めて欲しいものだ。 取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 写真/Shutterstock
逢ヶ瀬十吾/A4studio