岐路に立つ町内会・自治会 組織資産どう引き継ぐ?法人化という“選択肢”
認可地縁団体のために、登記移転の特例制度を創設したが…
“認可地縁団体”という新しい制度がスタートしてからも、権利関係による問題は出てきています。例えば、行政が道路を拡幅する計画を立てたものの、その場所には町内会が所有していた共同墓地があったのです。行政はその一部区画の買収を町内会に打診しましたが、名義人はすでに死亡しており、相続人も不明のままでした。そのため、行政は用地の買収ができず、事業計画を変更することになったのです。 こうした問題から、2015(平成27)年に総務省は、登記移転の円滑化を推進するための特例制度を創設。新制度では、市町村長が一定の手続きを踏むこととで個人名義で登記されていた資産を認可地縁団体に移転できるようにしたのです。
資産少ない町内会 認可地縁団体への移行に消極的
町内会が法人格を取得できるように制度改正されてから、約25年が経過しました。しかし、2013(平成25)年4月1日の時点で全国に約29万8000あった町内会・自治会のうち、法人格を取得した町内会・自治会は約4万4000団体。わずか約6分の1しか取得していないのです。 企業なら法務部や顧問弁護士といった法律に明るい担当者もいるでしょうが、地域住民の集合体である町内会や自治会にとって、法律が複雑に絡む法人化はハードルが高い、ということなのでしょうか? 「法人格を取得することで町内会でも町内会館といった不動産、広報宣伝車や防犯パトロールカーといった動産、そのほか債券といった金融資産の保有・継承もスムーズになりました。一方、自治会館などを保有していない町内会など、目立った資産を持たない町内会は認可地縁団体に移行するメリットは少ないと判断しているようです。そうした資産を持たない町内会などは、認可地縁団体に移行することには消極的です。地域によって事情はさまざまですから、総務省としても認可地縁団体への移行を奨励することはなく、そのために現在のような数字になっています」(同)。 時代や社会事情とともに変化を求められている町内会・自治会。法人化という新しい選択肢を得たことで、その活動が活発化して、さらなる地域貢献が期待されています。 小川裕夫=フリーランスライター