なぜ渋野日向子は注目の”凱旋試合”で予選落ちしてしまったのか…大ギャラリーの緊張感と露呈した調整不足
第2Rはティーショットが乱れた。フェアウエーをキープできたのは、14ホール中わずかに4ホール。パーオンも18ホール中11ホールと低調で、入れば予選通過だった最終18番(パー5)の約6メートルのバーディーパットも「入れに行って引っ掛けた」とカップに届かなかった。 「出だしからティーショットが、ほぼほぼ右に行っていた。単純に体が伸び上がっているのが原因だと思うが、修正しようとしたら今度は力んで左に曲げてしまう。パーを拾うのが精いっぱいで、パーを拾っても次のティーショットに生かせない。なんか前向きになれなかった」 久しぶりの日本。予選落ちという結果を渋野は淡々と振り返ったが、「前向きになれなかったのは、試合が始まる前から」と指摘する関係者もいる。 そもそも、この時期の国内スポット参戦の理由が、今ひとつはっきりしない。2週間後には今季メジャー第2戦「全米女子オープン」(6月2日開幕、米ノースカロライナ州)が控える。今年から賞金総額が1000万ドル(約13億円)に増額された名実ともに世界一を決めるビッグトーナメント。米国で試合に出ながら調整するのがベターだが、なぜか長距離移動が伴う帰国を選択した。その理由を渋野は、プロアマ戦が行われた18日の会見でこう説明していた。 「いろいろな日程を考え、いろんな選択肢がある中で、これまでの米国での結果や体調を考えて、この試合に出場するのがベストだと思った。4日間大会というのもありがたかった。いい状態で全米に臨みたい」 リシャッフルはもちろん、来季のシードもほぼ手中に収めたことが帰国を決めた理由の一つだが、シンガポールでの自身の米ツアー初戦に向けて2月下旬に日本を離れてすでに2カ月以上が経過。 「ハワイでのロッテ選手権から4日間大会が3試合続いたときは、正直しんどかった。リフレッシュの方法はまだ見つけられていない」と話すなど、実家のある岡山での充電が今回の帰国の一番の目的と考えるのが妥当だろう。 今大会の出場も急きょ決まったようだ。ある大会関係者は「ブリヂストンの用具を一切使用していない渋野プロの出場はまったく想定していなかった。ありがたいことだけど、ギャラリーや急に増えたメディアの対応など結構大変でした」と、うれしい悲鳴を上げていた。 久々の実家では家族水いらずの時間を過ごした。 想定外の予選落ちも、その“リフレッシュ休暇“明けのコンディション調整不足に、大ギャラリーの緊張感が加わって、心身と技術の問題点を修正できないまま2日間が過ぎてしまったと考えれば合点もいく。ある意味、目前に迫っている「全米女子オープン」と、中2週を置いて挑む「全米女子プロ選手権」(6月23日開幕、米メリーランド州)のビッグタイトルを前に悪いところがすべて出たことはプラスだったのかもしれない。 週明けの23日以降に再渡米する渋野は、会見の最後に「出直し!出直し!」と、自らに言い聞かせてから、ショット練習をするために練習場へ向かった。