自社株買い、増資、売り出しは投資チャンスになりやすい? 株価に与える影響
株価は、長期的に見れば、利益の成長に比例します。それを信じるならば、投資家はその会社の利益の変動のみを注視すればよいことになります。ところが、そうは簡単にいかないのが株式投資のむずかしさ。短期的には、さまざまな雑音によって上げたり下げたりしますので、その理由が分からない投資家は、右往左往します。 最初に申し上げておくと、必ずしも株価の上げ下げに確かな理由があるわけではありません。とくに材料がなくても、大きく動くこともあり、そんなときは「大口投資家の買い(もしくは売り)が入った」などと言われますが、真偽のほどは分かりません。 【画像】自社株買いが及ぼす影響 そんな中、業績とは関係ないものの、ほぼ確実に株価に影響を与える材料として、受給の変化があります。株価は、需要と供給で形成されていくので、需要が供給より高まれば株価は上昇し、需要が供給を下回れば株価は下落します。 具体的には、自社株買い、増資、売り出しです。
自社株買いが株価に及ぼす影響
2024年は、上場企業の自社株買いが非常に活発でした。4月以降に設定された自社株取得枠は10兆円を超え、過去最大となっています。自社株買いを発表した企業の株は、翌日、ほぼ例外なく上昇します。自社株買いとは、企業が自社の株式を市場から買い戻す行為を指します。自社株買いを行うと、市場に出回る株式の数が減少するため、需要>供給となり、結果的に株価の上昇をもたらします。
直近では、11月29日にサンケン電気(6707)が、発行株式総数の24.8%にあたる6000000株を上限に自社株買いを行うと発表しました。これが実行されると、市場から6000000株の株式が減少し、かなり需給がタイトになります。発表翌日の株価は、前日比で13.4%上昇とセオリー通りの反応でした。一般的には、発行株式数の2%程度が多いので、24.8%というのは異例の多さです。 自社株買いの場合、翌日の株価は上昇しますが、持続性があるかどうかは分かりません。というのも、表明通り自社株買いをするとは限らず、実際にはしない場合もあるからです。 たとえばサンケン電気の場合、自社株買いの総額上限は300億円ですから、平均取得株価5000円以下でないと6000000株の上限数を買うことができません。株価はすでに6000円(12月3日現在)を超えていますので、この調子で上昇してしまうと、上限に届かないまま自社株買い終了となってしまいます。 つまり、自社株買いを発表した企業の株の上昇は、短期的な反応で、その後の持続は保証されないと言えます。