反捕鯨団体シーシェパードの船になぜ「日本人女性」が乗っていたのか?手記で明かした真意とは
日本の捕鯨船を攻撃した反捕鯨団体「シーシェパード」の設立者のポール・ワトソンは今年、グリーンランドで捕鯨船・関鯨丸を妨害したことで逮捕され、日本はワトソン容疑者の身柄引き渡しを要請した。その「シーシェパード」に、かつて日本人女性が参加していたことが判明。あるミニコミ誌に手記を寄せていた彼女の行方を著者が追った。本稿は、山川 徹『鯨鯢の鰓にかく:商業捕鯨 再起への航跡』(小学館)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● シーシェパードに参加した 日本人女性の主張 手元に1冊の雑誌がある。 2011年4月に発行されたミニコミ誌『THE ART TIMES』。特集は〈ヨコハマの野毛は鯨芸ゲイの街!〉と題されている。 横浜市の野毛は、600近い飲食店が集まる飲み屋街だ。戦後、いち早く鯨肉が出回り、クジラカツを販売した「クジラ横町」と呼ばれる通りもある。〈鯨〉に続く〈芸〉〈ゲイ〉とは、大道芸イベントがひんぱんに開催され、新宿2丁目に次ぐゲイの町としても知られる野毛の特徴を表している。 ページをめくり驚いた。シーシェパードのボブ・バーカー号に乗船した日本人女性の手記が掲載されていたからだ。当時、58歳の彼女は2010年12月から2011年3月まで南極海の調査捕鯨の妨害活動に参加する。捕鯨にかんする日本メディアの〈洗脳的と言った方が良いほどのプロパガンダ報道〉に憤りを感じ、シーシェパードに加わったと書く。 彼女は、シーシェパードの主張を九つに分けて列挙した。その是非については読者に判断をゆだねたい。最小限の注釈を記すにとどめて、ひとつずつ引用しよう。
〈1.南極海クジラ保護区でクジラを殺している「密猟」であること〉 「南極海クジラ保護区」とは、IWC(国際捕鯨委員会)で1994年に採択された、南極海サンクチュアリ化だろう。南極海を商業捕鯨の禁止区域とする決定だが、調査捕鯨は認められていた。 〈2.絶滅危惧に指定されているクジラを殺している〉 〈3.オーストラリア連邦政府・最高裁の「オーストラリア海域での捕鯨禁止命令」を無視している〉 これは、2008年1月に、オーストラリア連邦裁判所が調査捕鯨を行う共同船舶に対し、オーストラリアの海岸線周辺や南極沿岸での捕獲調査停止を命じたことだと思われる。ただし捕鯨船がオーストラリア領海内に入らない限り、命令を執行できない決まりになっていた。 ● クジラを絶滅させることは 人類滅亡に繋がる?? 〈4.1986年にIWCによって決められた「商業捕鯨の永久モラトリアム」及び再三のIWCからの勧告通達を無視している〉 ここには注記が必要かもしれない。彼女は〈永久モラトリアム〉と記しているが、商業捕鯨モラトリアムは「一時停止」である。“永久”は一般的に流布したイメージに過ぎない。“永久”のイメージを定着させた南極海サンクチュアリ化を定めた条項には、10年ごとに再検討し、修正できると明記されている。