反捕鯨団体シーシェパードの船になぜ「日本人女性」が乗っていたのか?手記で明かした真意とは
〈我々は日本をノルウェー、アイスランド、デンマークとともに違法な商業捕鯨を続ける海賊国家と見なしている。日本の商業捕鯨は、国際法や条約の露骨な無視に過ぎない。いまもクジラやイルカを救うために、アイスランド、ノルウェー、デンマーク、日本の捕鯨を止めるためのキャンペーンは続けている〉 ノルウェー、アイスランドは、日本と同じく自国の排他的経済水域(EEZ)内で商業捕鯨を続ける国である。デンマークの捕鯨とは、フェロー諸島で伝統的に続くイルカの追い込み漁だと思われる。現在もキャンペーンを続けているというが、具体的な内容についての言及はなかった。 ● 南極海での捕鯨をしないなら 彼らは実力行使をしない 次の質問は、なぜ再開された令和の商業捕鯨に抗議しないのか。そして、抗議活動をやめた理由である。 〈調査船団には、日本政府のバックアップがついている。衛星監視システムが我々を監視し、自力では調査船団を捕捉できなくなった。我々が何百万ドル費やしても、何ヵ月かけても、調査船団に遭遇できなければ意味がない。また日本は我々に対抗するために新しい反テロ法を可決した〉
反テロ法とは、2017年に成立したテロ等準備罪だろう。調査船団への妨害活動を念頭に置いて制定されたわけではないはずだが、シーシェパードは脅威を覚えたのだろうか。それに彼らが書いているように、経済的にも引き際と考えた可能性もある。 EEZ内で行われている令和の商業捕鯨がどんな国際法や条約に抵触するのか、具体的に聞こうと再度メールを送り、改めてインタビューを申し込んだが、以来返事は途絶えたままだ。 シーシェパードの主張は事実認識の相違もあり、納得できない箇所も多い。だが回答では、彼らは〈南極海での調査捕鯨〉を問題視していたと述べており、実際に抗議を行ったのは南極海での調査だけだった事実と符合していた。 続いて、グリーンピース・ジャパンに問い合わせると、現在、捕鯨問題に取り組んでおらず回答は難しいという返答があった。2019年の調査捕鯨の中止を機に、クジラだけでなく、広く海洋を保護していく方針に変更したのだという。 シーシェパードとグリーンピースの回答からは、両者ともに抗議活動の対象を日本が行った南極海での調査捕鯨に定めていたのがわかる。
山川 徹