あの映画の聖地は〝海軍の基地〟だった 「ゴジラ-1.0」に「映像研」も 一般公開後SNSで話題に
かつては海軍の訓練施設だった
ここは戦時中、日本海軍が水上機の実習訓練施設として使っていた場所です。 水上機とは、胴体や翼の下にフロートと呼ばれる部品を着けて水に浮くようにし、水上で発着できるようにした航空機のこと。 スタジオジブリの映画「紅の豚」で主人公のライバル、カーチスが乗っていた飛行機もその一種です。 すぐ近くの霞ケ浦の水面で訓練を行っていたようで、岸辺には機体を打ち出すのに使った機械「カタパルト」の跡も残っています。 案内してくれた篠田さんは「元々は水上機のパイロットを育てる施設でしたが、戦況の悪化により、1945年5月にはこの基地からも水上偵察機が特攻機として戦地に派遣されました」と語ります。 戦後、本庁舎が東京医科歯科大学附属霞ケ浦分院として活用されたものの、それも1997年に閉院。 2016年に跡地が国から美浦村に払い下げられ、昨年7月に「鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)」として一般公開が始まりました。
壊される予定だったが……
プロジェクト茨城代表の金澤大介さんは、「当初、航空隊跡に残る遺構は取り壊される予定でした」と指摘します。 「それはあまりにももったいないと、史跡として保存・活用することのメリットを村にアピールしたんです」 「一般公開することで、保存にかかる経費の一部をまかない、村の観光資源にすることもできる。映画の聖地巡礼が、歴史的背景に興味をもってもらうきっかけになることもある」といいます。 「戦争の遺構を映画の撮影に使ったり、観光資源にしてもいいのかという議論もあります。けれど、まずはこの遺構を後世に残す方法を考えないといけない。少しでも長く、次の世代へと遺構を残すことが、多くの人に戦争の歴史に関心を持ってもらうことにつながると考えています」 残された遺構の中で、比較的保存状態の良い庁舎も一部で雨漏りがあるなど、遺構は老朽化が進んでいます。 補修をしなければ老朽化が進むが、きれいに直しすぎれば遺構としての価値が無くなってしまう――。そんなジレンマがあるといいます。 「見学者の安全を確保できる程度の補修・整備はしつつ、なるべくありのままの姿を残していきたいと思っています」