石破外交の致命的〝欠陥〟に迫る 噴飯ものアジア版NATO、大統領稼業「バージョン2」となったトランプ氏と「信頼関係構築は無理」
こう念押しされた場合、石破首相は何と答えるのか?
日米地位協定こそが、日米間の「不平等な関係」の象徴として、改定を声高に唱える点で日本の左翼と右翼の間には共通項がある。
だが、公務外で重大犯罪を引き起こした米兵を、起訴前に日本の警察当局に身柄を引き渡すなど、日米間で「運用の改善」を重ねてきた実態を一顧だにせず、「見直し・改定」にこだわるのは、木を見て森を見ずではないか?
真の片務性は、東京が攻撃されたら米軍が救援に駆け付けることを当然視している日本が、ニューヨークがミサイルで攻撃されたとしても、「憲法上の制約によって救援に行けません」と言い放つような状況を放置してきたことにある。なぜ、そこを手当てしないのか?
トランプ氏が来年1月、ホワイトハウスに戻ってくる。
初めての大統領稼業に緊張し、ワシントンでの立ち居振る舞いにも慣れていなかった1期目のトランプ氏ではもはやない。ぎこちない笑みを浮かべても、白目をむいても、やりおおせる相手ではない。
安倍首相(当時)の見解を聞きたがった1期目のトランプ氏とは違い、経験値を積み、自信を増幅させた「バージョン2」なのだ。
知的ウイットや愛嬌(あいきょう)とは無縁の石破首相がどんなにあがいたところで、トランプ氏との信頼関係構築は無理だろう。
であれば、その下の閣僚、次官、局長レベルで、米国との意思疎通、連携を重層的に確保していく他あるまい。
「トランプ・石破時代」。日米関係の真価が問われるときが来た。
山上信吾(やまがみ・しんご) 外交評論家。1961年、東京都生まれ。東大法学部卒業後、84年に外務省入省。北米二課長、条約課長、在英日本大使館公使。国際法局審議官、総合外交政策局審議官、国際情報統括官、経済局長、駐オーストラリア大使などを歴任し、2023年末に退官。現在はTMI総合法律事務所特別顧問などを務めつつ、外交評論活動を展開中。著書に『南半球便り』(文藝春秋企画出版)、『中国「戦狼外交」と闘う』(文春新書)、『日本外交の劣化 再生への道』(文藝春秋)。